鶴谷八幡宮

鶴谷八幡宮

鶴谷八幡宮（つるがやはちまんぐう）は、千葉県館山市八幡に鎮座する神社です。古くは安房国総社として、この地域の信仰の中心でした。旧社格は県社であり、現在でもその格式を保っています。

祭神

鶴谷八幡宮の祭神は、以下の三柱です。

品陀和気命（ほんだわけのみこと）：応神天皇として知られています。
帯中津彦命（たらしなかつひこのみこと）：仲哀天皇として知られています。
息長帯姫命（おきながたらしひめのみこと）：神功皇后として知られています。

これらの祭神は、いずれも皇室に関わりの深い神々であり、鶴谷八幡宮の歴史と由緒を物語っています。

歴史

鶴谷八幡宮の創建は、平安時代初期に遡ります。当初は、現在の南房総市府中に安房国総社として創建されました。しかし、鎌倉時代に入ると総社信仰が衰退し、代わりに源氏の影響で八幡神信仰が高まりました。その結果、総社から八幡宮へと改められ、現在の地へと遷座したと伝えられています。

康応2年（1390年）には、「安西八幡宮」という名で資料に登場しており、この頃には八幡宮としての地位を確立していたことが伺えます。中世には、里見氏から崇敬を受け、江戸時代には徳川幕府からも社殿の奉納や社領の寄進を受けるなど、手厚い保護を受けてきました。

明治時代に入ると、明治6年（1873年）に郷社、昭和15年（1940年）には県社に列せられました。昭和51年（1976年）には、創建1000年を記念した本殿改修の際に、「鶴谷八幡宮」と改称され、現在に至っています。

境内

国道127号に面して、大きな鳥居が聳え立っています。参道沿いには、日露戦争に関連する記念碑が並んでおり、歴史を感じさせます。

境内には、以下のような建物があります。

本殿：享保5年（1721年）に造営されたもので、館山市の指定文化財となっています。
幣殿：昭和7年（1932年）に造営されました。それ以前の社殿は、関東大震災で倒壊しています。
拝殿：幣殿と同じく、昭和7年（1932年）に造営されました。
社務所

また、境内にはいくつかの摂末社も祀られています。

若宮八幡神社：祭神は大雀命（仁徳天皇）。
高良神社：祭神は武内宿禰命。
鹿島神社：祭神は武甕槌命。
西宮神社：祭神は事代主命。

祭事

鶴谷八幡宮では、年間を通して様々な祭事が行われています。

歳旦祭（1月1日）
筒粥神事（1月15日）
節分祭（2月）
祈念祭（2月17日）
虫送り神事、大祓（6月30日）
風神祭（8月30日）
例大祭（9月14日、15日）
新嘗祭（11月23日）
大祓（12月31日）

例大祭（やわたんまち）

特に、例大祭は「やわたんまち」と呼ばれ、1000年以上続く伝統的な祭です。この祭りは、安房国司祭（国府祭）の伝統を受け継いでおり、千葉県無形民俗文化財にも指定されています。南房総を代表する祭として、多くの人々で賑わいます。

初日には、安房国南部の10社の神輿が鶴谷八幡宮に集まり、翌日には市内5町から山車やお船が出ます。夕刻には、10社の神輿の還御と八幡宮神輿の御浜出が行われます。

近年では、令和元年（2019年）の房総半島台風や新型コロナウイルス感染症の影響で、神輿や山車の出祭が中止されることがありましたが、2022年には山車が5年ぶりに引き回され、祭りの活気が戻りつつあります。

文化財

鶴谷八幡宮には、多くの文化財が残されています。

千葉県指定文化財

無形民俗文化財：「安房やわたんまち」（平成16年3月30日指定）

館山市指定文化財

有形文化財：「鶴谷八幡神社本殿（建造物）」（昭和42年2月21日指定）
有形文化財：「鶴谷八幡神社百態の龍（彫刻）」（昭和49年2月21日指定）
有形文化財：「刀 銘「守家」（工芸品）」（昭和58年10月25日指定）
有形文化財：「鶴谷八幡神社棟札 3枚（考古資料）」（館山市立博物館に保管。昭和40年4月21日指定）
無形民俗文化財：「鶴谷八幡宮の筒粥神事」（平成5年12月24日指定）

関連文化財

元八幡神社：南房総市指定史跡（平成3年9月10日指定）
元八幡神社御清水送りの儀式：南房総市指定無形民俗文化財（平成3年9月10日指定）

現地情報

所在地

千葉県館山市八幡68

交通アクセス

鉄道：東日本旅客鉄道（JR東日本）内房線 館山駅から、北へ約1キロメートル。

鶴谷八幡宮は、歴史と文化が息づく場所です。訪れる際には、その歴史と文化に触れてみてください。

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