鷲田小彌太

鷲田 小彌太（わしだ こやた）は、1942年（昭和17年）3月13日生まれの日本の哲学者です。札幌大学の名誉教授として知られています。

経歴

現在の札幌市厚別区にあたる北海道札幌郡白石村字厚別の出身です。実家は雑貨商を営んでおり、祖父の彌太郎氏は1937年から1941年まで白石村の村長を務めていました。札幌市立信濃小学校、札幌市立平岸中学校、北海道札幌南高等学校を卒業後、1966年に大阪大学文学部哲学科（倫理学）を卒業しました。その後、同大学大学院博士課程に進学し、1972年に単位取得満期退学しています。

大学院修了後、1975年に津市立三重短期大学の専任講師（法哲学）に就任し、1976年に助教授、1980年には教授へと昇進しました。1983年からは札幌大学に移り、教養部教授を務め、1995年には経済学部教授となりました。2012年に定年を迎え、現在は札幌大学名誉教授です。

研究と思想

専門は哲学および倫理学であり、初期にはマルクス、ヘーゲル、スピノザといった思想家を深く研究し、その成果を著書として多数発表しました。しかし、1980年代末頃からは、『昭和思想60年』、『吉本隆明論』、『天皇論』といった著作を通じて、それまでのマルクス主義的な視点を再検討し、「清算」する姿勢を示しました。

この時期と並行して、文芸評論家の谷沢永一氏らの影響も受け、読書論に関する著作を手がけるようになり、精力的に書評活動を展開しました。多様な分野への関心は、その後の幅広い著作活動の礎となります。

著作活動

1991年には、『大学教授になる方法』がベストセラーとなり、多くの読者に知られることとなりました。これを機に、以降の著作活動は人生論や勉強法、思考術、教育論、社会論など、より幅広いテーマへと広がり、哲学的な視点を日常生活や社会問題に応用した実用的な書籍を多数発表しています。平易な言葉で哲学的な概念を解説し、読者が自ら考え、生きるヒントを得られるような著作が多いのが特徴です。

主要な著作としては、『昭和思想60年』、『現代思想』、『人生論』、『日本人の哲学』（全5巻全10部）などがあります。また、2019年には『福沢諭吉の事件簿』シリーズで時代小説にも挑戦するなど、常に新たな分野への探求心を持ち続けています。

地域との関わり

私生活では、北海道長沼町の過疎地に30年以上にわたり居住しました。その間、1988年から1997年には厚生福祉法人長沼陽風会の理事長をボランティアとして務めるなど、地域社会との関わりも持っていました。2017年に長沼町を離れ、生まれ故郷である札幌市厚別区に戻っています。

多岐にわたる著作と活動を通じて、専門哲学の世界にとどまらず、一般の人々に哲学や思考の重要性を伝え続けている人物と言えるでしょう。

主な著作（一部抜粋）

『ヘーゲル『法哲学』研究序論』（1975年）
『昭和思想史60年』（1986年）
『大学教授になる方法』（1991年）
『哲学がわかる事典』（1992年）
『自分で考える技術』（1993年）
『読書原論 21世紀の読書=忘れる読書』（2023年）

他多数。

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