鹿園直建

鹿園直建：日本の地球科学に貢献した研究者

鹿園直建氏（1946年-2014年）は、日本の地球科学分野において多大な貢献を果たした著名な研究者です。鉱床学、地球化学を専門とし、東京大学、慶應義塾大学で長年にわたり研究活動を行い、後進の育成にも尽力しました。その業績は、学術論文、著書、そして学会活動を通して広く知られています。

生涯と経歴

鹿園氏は1946年東京都に生まれました。東京大学理学部地学科を卒業後、同大学院地質学博士課程を修了し、博士（理学）の学位を取得します。学位論文は日本の熱水性鉱床、特に北海道豊羽鉛-亜鉛鉱床の生成環境に関する研究でした。

1974年から1990年までは東京大学理学部助手として、熱水鉱床、地熱系、放射性廃棄物地層処分などの研究に従事しました。この間、1979年から1980年にかけては米国ハーバード大学地質学教室に招聘研究員として滞在し、国際的な研究交流も経験しています。

1990年には慶應義塾大学理工学部に移り、助教授、教授を歴任します。慶應義塾大学では、東京大学での研究をさらに発展させ、二酸化炭素地中貯留、水－岩石系における物質移行、グローバル物質循環と環境変動など幅広い研究テーマに取り組みました。2012年に慶應義塾大学を定年退職後も、東京学芸大学で研究を継続し、1996年から1997年にかけて再びハーバード大学地球惑星科学教室に招聘研究員として滞在するなど、精力的な研究活動を続けました。2004年から2006年にかけては資源地質学会会長を務め、学会活動にも大きく貢献しました。

2014年、虚血性心疾患のため67歳で逝去しました。

研究業績

鹿園氏の研究は、熱水鉱床（鉱脈鉱床、黒鉱鉱床）の生成メカニズムの解明に焦点を当てたものから始まりました。東京大学在籍時には地熱系や放射性廃棄物地層処分に関する研究にも取り組み、慶應義塾大学に移ってからは、地球環境問題に深く関わる二酸化炭素地中貯留や、水質・土壌分析、熱水変質といった水－岩石系における物質移行に関する研究を精力的に展開しました。さらに、グローバルな視点から物質循環と環境変動の問題にも取り組むなど、研究対象は常に広がりを見せていました。

これらの多岐にわたる研究業績は高く評価され、2010年には資源地質学会から加藤武夫賞を受賞しました。この賞は、資源地質学の進歩に顕著な貢献をした研究者に贈られる名誉ある賞です。

著作

鹿園氏は、多くの学術論文に加え、一般読者向けの分かりやすい解説書も多数執筆しています。主な著書として、『地の底のめぐみ－黒鉱の化学－』、『地球システム科学入門』、『地球システムの化学－環境・資源の解析と予測』、『廃棄物とのつきあい方』、『地球学入門』、『地球惑星システム科学入門』、『地球システム環境化学』、『水資源の科学』、『Introduction to Earth and Planetary System Science: New View of Earth, Planets and Humans』などがあります。これらの著書は、地球科学の基礎から最新の研究成果までを網羅し、幅広い読者層に親しまれています。また、岩波講座などの編著書にも多数携わっています。

まとめ

鹿園直建氏は、熱水鉱床から地球環境問題まで、幅広い分野で卓越した研究成果を挙げ、日本の地球科学の発展に大きく貢献しました。その功績は、数多くの論文や著書、そして後進の育成を通して、今後も長く語り継がれるでしょう。彼の残した研究成果は、今後の地球科学研究の進歩に大きな影響を与えるものと期待されます。

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