鹿島祐徳ロードレース大会

佐賀県鹿島市で毎年2月の恒例行事として定着している鹿島祐徳ロードレース大会は、日本陸上競技連盟公認の格式あるロードレース大会です。主要種目はハーフマラソンですが、その他にも10キロ、3キロ、2キロ、ジョギングといった多様な部門が設けられており、特にハーフマラソンと10キロの部は日本陸連の公認を受けています。

この大会の歴史は非常に古く、戦後間もない1952年（昭和27年）に第一回が開催されました。地域社会に活気を取り戻すことを目指して始まった市民マラソンは、全国的に見ても屈指の長い歴史を誇ります。創設当初は20キロの距離で行われていましたが、第38回からは30キロに変更。そして2001年の記念すべき第50回大会を機に、現在のハーフマラソンがメイン種目となりました。時代の変化と共に距離は変われど、その精神は受け継がれています。

鹿島祐徳ロードレース大会は、その長い歴史にふさわしく、数多くの著名な陸上選手が名を連ねてきた舞台でもあります。例えば、メキシコオリンピックのマラソン日本代表であった佐々木精一郎選手は、第16回大会から三連覇を達成しています。他にも、モスクワオリンピック代表の喜多秀喜選手、30キロロードの元日本記録保持者である西本一也選手、1995年世界陸上代表の早田俊幸選手、そして佐賀陸上競技協会の会長を務めた末次康裕氏など、そうそうたる顔ぶれが優勝者としてこの大会の歴史に名を刻んでいます。

近年、この大会の競技性はさらに高まっています。2011年の第60回大会では、箱根駅伝などで注目を集める関東学生陸上競技連盟所属の大学選手が、初めて招待選手として参加しました。この出来事を契機として、鹿島市は市内の陸上競技場やクロスカントリーコースなどを備える蟻尾山公園を中心に、陸上長距離選手の合宿誘致に力を入れ始めます。その結果、この年以降、合宿で鹿島を訪れた大学や実業団の有力選手が多数、本大会に出場するようになり、大東文化大学の市田孝選手や東洋大学の田口雅也選手といったトップレベルの選手たちがハーフマラソンで優勝を飾るなど、ハイレベルなレース展開が繰り広げられています。仮装して楽しむ市民ランナーの姿が多く見られる大会がある中で、鹿島祐徳ロードレース大会は、記録更新や自己の限界に挑戦することを追求する、競技志向のランナーに特に支持されています。

大会のコースは、鹿島市古枝に位置する祐徳稲荷神社の参道に面した林業体育館前を発着点とし、鹿島市の中心部を抜けて嬉野市塩田町下野辺田で折り返すルートです。このコースは全体的に高低差が少なく平坦であるため、有力選手が出場する際には高速レースとなる傾向があります。

大会の運営は、一般財団法人佐賀陸上競技協会と一般財団法人鹿島市スポーツ協会が主催し、鹿島市、鹿島市教育委員会、祐徳稲荷神社、祐徳自動車、佐賀新聞社が共催という形で、地域全体が一体となって支えています。

近年の大会は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。2020年の第69回大会は、感染拡大に伴い、参加ランナーやスタッフ、ボランティアなど多数の関係者の安全確保が困難と判断され、中止となりました。翌2021年も開催は断念。2022年には2月に延期開催を目指しましたが、今後の感染状況の見通しが立たないことや、季節性インフルエンザの流行リスクも考慮した結果、参加選手や運営スタッフの感染防止策を徹底することが難しいとの理由から、再び中止が決定されました。その後、改めて2023年2月26日に第70回大会を延期して開催する運びとなりました。

鹿島祐徳ロードレース大会は、その長い歴史と高い競技性、そして地域に根差した運営によって、多くのランナーにとって特別な大会であり続けています。

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