鹿持雅澄

鹿持雅澄:貧困を乗り越えた国学の巨匠



鹿持雅澄(かもちまさずみ、高知県'>[1791年]]-1858年)は、江戸時代後期を代表する国学者です。土佐国]の貧しい家に生まれながらも、並外れた学力と強い意志で、[[国学研究の新たな地平を切り開きました。本名は雅澄ですが、藤田、山斉、古義軒といった様々な号で知られています。飛鳥井深澄や藤原太郎雅澄といった別名も使用していました。

厳しい生い立ちと勉学への情熱



雅澄は、土佐一条氏に仕えた家系の出身でしたが、代々貧困に苦しむ生活を送っていました。17歳から儒学と国学を学び始めますが、貧しさゆえに書籍を購入することはできず、知人から本を借りては熱心に読書する日々を送りました。彼の勉学への情熱は、類まれなものであったと言えます。

藩校での活躍と『万葉集』研究



浦奉行下役を務めた後、家老・福岡孝則の目に留まり、藩校教授館下役、さらに写本校正係に抜擢されます。この経験は、雅澄の研究人生に大きな転機をもたらしました。福岡家の蔵書閲覧を許されたことで、『万葉集』研究に没頭することができ、その才能が開していったのです。当初は歌作の参考に古道を求めるという目的で研究を始めた雅澄でしたが、やがてそれは生涯の業績となる壮大な研究へと発展していきます。

万葉集古義』:国学研究の金字塔



雅澄の生涯をかけた著述『万葉集古義』は、国学研究における金字塔と評されています。脱稿後も半世紀にわたる改訂を重ね、谷真潮以来の土佐万葉学の集大成であり、日本の国学研究史に燦然と輝く業績となりました。しかし、生前には出版されず、門弟らによってその存在が明治天皇に伝えられたのち、明治24年(1891年)になってようやく世に出ることになります。その後も幾度となく刊行され、現在に至るまで多くの研究者たちに読み継がれています。

国語学への貢献



万葉集古義』付録の『雅言成法』『針嚢』『結詞例』などにおいて、雅澄は『万葉集』における独自の言語理論を展開しました。本居宣長が論じた中世和歌の係り結びとは異なる法則の存在を指摘し、宣長の研究には及ばなかった歴史的言語変化を明らかにしました。さらに、『舒言之転例』では延言の分類、『雅言成法』では約言の発生、『用言変格例』では四段活用の重要性など、独創的な研究成果を多数発表しました。これらの研究は、すべて『万葉集』研究から派生したものであり、国語学の発展にも大きく貢献しました。

教育者としての顔



雅澄は、学問の研鑽だけでなく、後進の育成にも力を注ぎました。自邸を国学塾「古義軒」として開講し、武市半平太や吉村虎太郎など、多くの優秀な弟子を育てました。藩政にも積極的に関与し、上書によって国学を藩校に取り入れるなど、土佐藩における国学の発展に尽力しました。

質素な生活と独特の人物像



雅澄は、学問以外のことに関してはまるで無能であったと伝えられています。貧しい生活の中で、を買うお金でを買って一日中眺めていたという逸話や、漏りする家で読書に耽っていたという逸話などは、彼の徹底した学問への没頭ぶりを示しています。また、「をつく時のの音に合わせて難解な語句を静かに誦していると、が白くなった時には、大抵の難解も分かる」という、独特の学習法も興味深いものです。

まとめ



鹿持雅澄は、貧困という逆境を乗り越え、並々ならぬ努力で国学、国語学の分野で偉大な業績を残しました。『万葉集古義』をはじめとする彼の研究は、後世の研究者たちに多大な影響を与え続け、今もなお高く評価されています。彼の生涯は、学問への情熱と強い意志の大切さを教えてくれる、感動的な物語と言えるでしょう。

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