麗江古城

麗江古城：時を超え、文化が息づく古都

麗江古城は、中国雲南省麗江市古城区に位置する、ナシ族によって建設された美しい旧市街です。麗江古鎮とも呼ばれ、かつては大研鎮として知られていました。1997年には、その文化的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されています。

歴史と文化の交差点

ナシ族は、8世紀頃に青海省付近から南下してきた民族で、この地に独自の文化を築き上げました。麗江古城は、大理時代末期から現代に至るまでの約800年間、チベット族、ペー族、漢族など、周辺地域の様々な民族の影響を受けながら、ナシ族の政治、経済、文化の中心地として発展してきました。

古城の建築物は、そのほとんどが1〜3階建ての木造瓦葺きで、4156戸もの住居が密集しています。伝統的な住居形式は、「聯排式」と「合院式」の2つに大別されます。

聯排式: 街路に面して間口が並ぶ長屋形式で、2階建てが一般的です。1階は店舗、2階以上は住居や倉庫として利用され、商業地区に多く見られます。
合院式: 中庭を中心とした1〜2階建ての家屋で、周囲を壁で囲み、通りに面した壁に門があります。白族や漢族の影響を受けた住居形式で、「三坊一照壁」など多様な形態が存在します。

古城内には、仏教や道教の仏像が祀られ、少数民族によって描かれた麗江壁画が残されています。また、大理時代末期の豪族、牟保阿琮（麗江土司・木氏の祖である阿琮阿良の父）によって築かれた「木府」も存在します。ただし、木府は1996年の地震で倒壊し、その後修復・再建されたものです。

世界遺産登録後の変容と課題

世界遺産に登録された後、麗江古城は急速な変化を遂げています。かつて生活市場だった商業地区は土産物店街へと変貌し、外部からの流入人口増加により人口密度が上昇しました。伝統的な外観を維持しつつも、内部がディスコやカフェ、ライブハウスなどに改装された住居が増加し、古城におけるナシ族の人口比率は低下傾向にあります。

また、森林資源の減少による建材不足や、景観保全ガイドラインの厳格な運用による建物保全費用の増大も、古城の伝統的な住居の存続を脅かす要因となっています。経済的な負担に耐えかねたナシ族住民が、安価な新市街へ移転したり、建物の修復を断念する例も見られるようになっています。

観光地としての魅力と課題

麗江古城は、中国の5A級観光地として、国内外から多くの観光客が訪れる人気の観光スポットです。特に夜間は、ライトアップされた美しい街並みが人々を魅了します。しかし、観光客の増加は、騒音問題や伝統文化の衰退といった課題も引き起こしています。四方街周辺では、現代的な音楽が響き渡り、古都の静寂は失われつつあります。

かつて麗江古城への入域には「古城維持費」が必要でしたが、2019年に廃止されました。

世界遺産登録基準

麗江古城は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

麗江古城は、その美しい景観と豊かな文化を持つ、かけがえのない世界遺産です。しかし、観光開発と伝統文化の保護という課題に直面しています。今後、持続可能な観光のあり方を模索し、古城の魅力を未来へと継承していくことが求められています。

参考文献

山村高淑、布野修司（編）、2005、「聯排式住居と三坊一照壁」、『世界住居誌』、昭和堂

関連項目

* トンパ文字

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