黄土の旗幟のもと

黄土の旗幟のもと

『黄土の旗幟のもと』（こうどのきしのもと）は、皇なつきによる日本の漫画作品で、『ミステリーDX』増刊「歴史ロマンDX」（角川書店）に連載されていました。この作品は、明朝末期の動乱期を舞台に、一人の挙人が時代のうねりに巻き込まれ、自らの正義を貫こうとする姿を描いた歴史漫画です。

あらすじ

物語は、国の未来を憂う杞県の挙人・李信（りしん）が、李自成（りじせい）と出会う場面から始まります。李信は、重税に苦しむ民衆を救いたいという強い思いを抱いており、その人望の厚さから人々からの信頼も得ていました。しかし、腐敗した官僚たちは民の声に耳を傾けず、状況は悪化の一途を辿ります。そんな中、李信は李自成の掲げる「新しい国作り」という理想に共鳴し、彼の軍に身を投じることを決意します。李自成軍は各地で勢力を拡大し、ついに洛陽を攻略するまでを描いています。

主要な登場人物

李戴之（りたいし）/ 李信（りしん）/ 李巌（りがん）:
主人公。当初は李信と名乗り、後に李巌と改名します。重税に苦しむ民衆を救済しようと奔走する、人望の厚い挙人です。暴力による解決を嫌い、平和的な手段で民を救おうとしますが、妻の自殺をきっかけに、李自成の軍へ参加を決意します。

紅娘子（こうじょうし）:
盗賊や民を苦しめる役人を懲らしめる、義侠心に溢れる娘。李信が軍に入ったのを機に、自らも軍に身を投じ、李信を支えます。

李侔（りぼう）:
字を斉修（さいしゅう）。李信の実弟であり、兄を支える存在です。

宋（そう）:
杞県を治める地方官。民衆の苦しみを知りながらも、減税を訴える声に耳を貸そうとしません。腐敗した官僚の典型として描かれています。

李自成（りじせい）:
通称・闖将（ちんしょう）。新しい国作りを目指し、民衆から厚い支持を集めるリーダー。李信の人望に目を付け、自軍に招き入れようとします。

郭鵬樹（かくほうじゅ）:
洛陽の通伴。李信の親友であり、淑艶の兄。李信が李自成の軍に入ったのは人質に取られたためだと考え、李自成に降伏を促すために軍へ向かいます。

作品の魅力

『黄土の旗幟のもと』は、歴史上の人物を題材にしながらも、登場人物たちの葛藤や人間模様を丁寧に描いています。李信の正義感や、紅娘子の勇敢さ、李自成のカリスマ性など、それぞれのキャラクターが魅力的であり、読者は彼らの生き方に共感し、感情移入することができます。また、明朝末期の社会情勢や民衆の生活がリアルに描かれており、歴史に興味のある読者にとっても楽しめる作品となっています。

書誌情報

単行本：1996年5月発行、角川書店《あすかコミックスDX》、ISBN 4-04-852675-8
文庫本：2005年12月発行、潮出版社《潮漫画文庫》、ISBN 4-267-01734-4、解説：岡崎由美（早稲田大学文学部教授）
* 収録作品：「死出の山越え」「人喰い」「蛇姫御殿」

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