黄金の三日月地帯

黄金の三日月地帯

黄金の三日月地帯（おうごんのみかづきちたい）、英語ではGold Crescentと呼ばれるこの地域は、アフガニスタンのニームルーズ州、パキスタンのバローチスターン州・カイバル・パクトゥンクワ州、そしてイランの国境が交差する場所に位置しています。この地域は三日月形をした国境地帯で、アフガニスタンの東部にあるジャラーラーバードから南部のカンダハールを経由し、南西部のザランジ南方に至ります。ここはまた、世界最大の麻薬の密造地帯として知られ、「黄金の三角地帯」と並ぶ重要な地域です。

この地域でのケシの栽培は主にジャラーラーバードで行われ、1999年には世界の約80％にあたる4665トンの生産量を誇りました。しかし、2000年7月にタリバンのオマル師によりケシ栽培が全面的に禁止された結果、同年の生産量は3276トン、翌2001年にはわずか185トンにまで減少しました。にもかかわらず、2001年のタリバン政権崩壊後、再び生産は増加に転じ、2005年には4100トン、作付面積も10万ヘクタールを超えるほどに拡大し、世界シェアの85％以上に達しました。

アフガニスタンで製造された麻薬の約60％は近隣諸国で消費され、残りが欧州市場に流入しています。さらには、欧州で流通している麻薬の80％以上がアフガニスタン原産であるとのデータもあり、アフガニスタン国内の麻薬依存者の数は2006年には92万人を超え、大きな社会問題として浮上しています。この深刻な問題に対処するため、国連を中心に活動が展開され、農民に対して代替作物の導入や啓発活動が行われてきました。また、アフガニスタン政府も麻薬対策省を設立し、効果的な対策の強化に取り組んでいます。

2021年に成立したタリバン暫定政権は、2022年4月に新たな麻薬禁止令を発出し、ケシ栽培を禁じる措置を取りました。しかし、国連薬物犯罪事務所（UNODC）の報告によれば、2022年の推定生産量は6200トンに達し、世界の麻薬市場の約80％を占める状況にありました。しかし、2023年にはケシの生産量が333トンにまで減少し、その一因として全土での小麦への転作の進展が挙げられます。ただし、小麦による農家の収入はケシよりも低く、農家たちの経済的状況は厳しさを増しています。

このように、黄金の三日月地帯は麻薬の生産と流通の複雑な問題を抱える地域であり、今後の対策や地域の安定に向けた取り組みが重要となっています。もう一つの世界的な麻薬密造地帯である黄金の三角地帯は、東南アジアのタイ、ミャンマー、ラオスの国境が接する地域に存在しますが、黄金の三日月地帯と共に、その影響は国際的な課題として注目されています。

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