ジャラーラーバード

ジャラーラーバードは、アフガニスタン東部に位置するナンガルハール州の州都であり、カーブル川とクナル川が合流する地点にあります。この都市は、アフガニスタンの首都カーブルから西へ約145km、パキスタンのペシャーワルから東へほぼ同距離に位置し、交通の要衝として古くから重要な役割を果たしてきました。特に、カイバル峠を越えてアフガニスタンに入国する際の最初の主要都市であり、国内外からの交通の拠点となっています。

市内にはナンガルハール大学があり、教育・文化の中心地でもあります。2006年の公式推計では人口は約16万8千人で、アフガニスタン東部で最大、国内では8番目に大きな都市です。

歴史

ジャラーラーバードは、古くはクシャーナ朝時代にガンダーラ仏教文化の中心地の一つとして栄えました。7世紀には中国の僧侶、玄奘三蔵がインドへ向かう途中に立ち寄った記録も残っています。その後、アラブの支配を経て、10世紀にはガズナ朝の支配下に入りました。16世紀にはムガル帝国のバーブルが都市建設に着手し、アクバルによって現在のジャラーラーバードの基礎が築かれました。

近代に入ると、19世紀の第一次アフガン戦争では、イギリス軍がアクバル・ハン王子の軍勢に包囲されるという激戦地となりました。また、第二次アフガン戦争でもイギリス軍が再び進軍するなど、戦略的に重要な場所でした。20世紀後半には、ソ連の影響下に入りましたが、その後ターリバーンの支配下に置かれました。ターリバーン崩壊後は、国連やNATOの支援のもとで復興が進められましたが、同時にパキスタンからの難民が戻ってきています。近年では、米軍基地が多く存在していましたが、2021年にはターリバーンが再び制圧しています。

住民の多くはパシュトゥーン人であり、パシュトゥーン人にとって重要な町の一つです。

主なテロ・事件・事故

近年、ジャラーラーバードでは数多くのテロ事件が発生しており、市民生活に大きな影響を与えています。以下に主な事件を列挙します。

2007年3月：米軍の車列に対する自爆攻撃と銃撃戦が発生し、多数の死傷者が出ました。
2012年2月：NATO基地が自爆攻撃を受け、民間人や兵士が犠牲になりました。
2013年5月：赤十字国際委員会の事務所が襲撃され、銃撃戦が発生しました。
2013年8月：インド領事館前で自動車爆弾が爆発し、多くの死傷者が出ました。
2015年4月：銀行前で自爆テロが発生し、多数の死傷者が発生しました。
2016年1月：部族指導者会議の会場が自爆攻撃を受け、多数の死傷者が出ました。
2017年5月：国営放送局RTAが武装勢力に襲撃され、死傷者が出ました。
2017年12月：葬儀会場が爆弾で攻撃され、多数の死傷者が出ました。他にもテロが頻発しました。
2018年1月：国際NGO組織セーブ・ザ・チルドレンの事務所が襲撃され、死傷者が出ました。
2018年5月：財務部が襲撃され、多数の死傷者が出ました。
2018年5月：クリケット競技場で連続爆発が発生し、多数の死傷者が出ました。
2018年7月: 政府庁舎が武装勢力に襲撃され、銃撃戦で多数の死傷者が出ました。
2019年12月：ペシャワール会の医師、中村哲氏らが銃撃により殺害されました。
2021年8月: アメリカ軍がISIL-K幹部を無人機で爆殺しました。

これらの事件は、ジャラーラーバードの不安定な治安情勢を物語っており、市民生活に深刻な影響を与えています。

気候

ジャラーラーバードは、ケッペンの気候区分で砂漠気候に分類され、特に夏季は非常に高温で乾燥した気候となります。一方で、冬季は比較的温暖で、アフガニスタン国内でも過ごしやすい地域として知られています。このため、過去には「冬の首都」として利用されたこともあり、現在でも冬になるとカーブルから避寒に訪れる人々がいます。

姉妹都市

* サンディエゴ（アメリカ合衆国）

ジャラーラーバードは、その歴史的な背景と地理的な重要性から、多くの注目を集めてきましたが、同時にテロや紛争の被害を多く受けてきた都市でもあります。今後の復興と安定が望まれます。

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