黄金の床几

黄金の床几とは

黄金の床几（おうごんのしょうぎ）、英語で言うところの Golden Stool は、アシャンティ人の間で非常に重要な象徴となっている神聖な玉座です。この玉座は「民族統合の象徴」としての地位を占めており、アシャンティ人の精神的な結束を反映しています。伝説によると、この床几は神官オコンフォ・アノキェによって空から降ろされ、初代国王オセイ・トゥトゥの膝に置かれたとされています。これは単なる椅子ではなく、アシャンティ王国の人々の魂が宿る場所と信じられています。

象徴と儀礼

黄金の床几は単に物理的なものではなく、持ち主の魂の座とされ、他者の魂が通り過ぎる際にはその脇に立てかけられることが決まっています。また、この玉座は地面には直接置かれず、必ず毛布の上に座されます。新しい王が即位する際には、床几の上で王を持ち上げる儀式が行われ、その際に床几には直接触れてはならないとされています。このように、黄金の床几はアシャンティの最高指導者のみが扱うことを許されており、通常は枕の上に載せて王の元へ運ばれることになります。

歴史上の紛争

この神聖な玉座が所有されることを巡っては、歴史を通じて何度も戦争が起きています。例えば、1896年にアシャンティの王プレンペー1世は、この床几を失うことを恐れて国外に退去せざるを得なかったのです。さらに、1900年には英領ゴールド・コーストの総督サー・フレデリック・ホジソンが床几に座ろうとしたことがきっかけとなり、黄金の床几戦争と呼ばれる大規模な武装蜂起が発生しました。この戦争の結果、アシャンティ王国は大英帝国に併合されることになりますが、床几の聖性自体は依然として保持されました。さらに、1921年に道路工事業者によって床几が発見され、金の装飾が剥ぎ取られる事件も起こりました。この時、犯人は地元の習慣に従って裁判にかけられましたが、英国の介入により、結局は死刑ではなく追放処分となりました。これがあったからこそ、床几は隠し場所から出されることになり、1935年のプレンペー2世の戴冠式でも使用されたのです。

外観と細工

黄金の床几のデザインは非常に特徴的で、高さは46センチ、幅は61センチ、深さは30センチです。全体が黄金の象嵌で装飾されており、王に対する危険を警告する鈴も取り付けられています。この玉座は一般にはあまり見られることはなく、限られた王室関係者だけがその保管場所を知っています。また、族長の葬儀に際してはそのレプリカが作られることがあり、その際には世代を超える力を象徴するために、儀礼的に動物の血で塗られます。黄金の床几は現在でもアシャンティの人々にとって、継承と力の象徴として大切にされています。

脚注

このように、黄金の床几は単なる装飾的な要素を超え、アシャンティの文化や歴史に深く根ざした重要な存在です。

もう一度検索