黄金の角

黄金の角 (Guldhornene)とは

黄金の角は、デンマークの南ユトランド地方、トゥナの北に位置するガレーフス村で発掘された、一対の金で作られた角です。長い方の1号は1639年に、短い方の2号は1734年に発見されました。これらの角は5世紀頃のものと推定されています。

概要

角は純金製の輪を繋ぎ合わせて作られており、表面には様々な文様が施されています。これらの文様は、失われたゲルマン民族の伝説を描いているとも、ケルト神話に由来するとも考えられています。特に、角を持つ男性像がケルト神話の神ケルヌンノスに似ている点が指摘されています。また、雄ヤギや蛇、鹿といったケルヌンノスと関連付けられる要素も描かれています。デンマークでは、他にもケルトの影響を受けた考古学的遺物が発見されています。

2本の角は元々同じ長さでしたが、2号は発見当時すでに一部が欠けており、1号よりも短くなっていました。1号の長さは約75.8cm、開口部の直径は約10.4cm、重さは約3.2kgでした。

起源

黄金の角は、ユトランド半島に住んでいたキンブリ族やジュート族に起源を持つと考えられていますが、出自を特定する説は複数存在します。角は宗教的な儀式で使われた後、神への捧げものとして地中に埋められた可能性があります。しかし、同地域からは木やガラス、骨、青銅などで作られた同様の形状の角も見つかっており、中には酒を飲むためではなく、吹き鳴らすために作られたものもあるため、この説も確定的なものではありません。

発見

1号は1639年6月20日に、農民の少女キーステン・スヴェンダタァによって発見されました。角は地面から突き出た状態で発見され、彼女はクリスチャン4世に手紙を送り、角は王に献上されました。その後、王から孫のクリスチャン（後のクリスチャン5世）に与えられましたが、彼は角を酒杯に作り変えました。1641年には、好古家のオーレ・ヴォームが学術論文でこの角について論じています。現存する最古のスケッチは、この論文に掲載されたものです。

2号は1734年4月21日に、1号の発見場所からほど近い場所でエリック・ラッセンによって発見されました。しかし、2号は一部が欠けており、1号よりも短くなっていました。ラッセンはこれをシャーケンボーの伯爵に献上し、伯爵はクリスチャン6世に譲渡しました。その後、これらはクリスチャンスボーの王立美術収蔵室に納められました。

碑文

2号の開口部には、ルーン文字で碑文が刻まれていました。

ᛖᚲ ᚺᛚᛖᚹᚨᚷᚨᛊᛏᛁᛉ ᚺᛟᛚᛏᛁᛃᚨᛉ ᚺᛟᚱᚾᚨ ᛏᚨᚹᛁᛞᛟ

この碑文は、ノルド祖語で「ek hlewagastiz holtijaz horna tawido」と読むことができ、「名誉ある客、ホルテの息子たる余がこの角を作れり」という意味になります。「Hlewagastiz」は角を作った人物の名前で、「風下の客」または「名高い客」を意味すると考えられています。これは、最古の古ルーン文字で書かれた銘文の一つであり、頭韻詩の一節です。

盗難と破壊

1802年5月2日、金細工職人のニールス・ハイデンライヒが合鍵を使って収蔵場所に侵入し、2本の角を盗んで溶かしてしまいました。彼は角を溶かして地金にしてしまい、偽造コインの材料にしました。ハイデンライヒは逮捕され、有罪判決を受けました。彼からコインを買った人々はそれを博物館に返還しましたが、それらのコインが後に制作された複製品に使われることはありませんでした。

オリジナルから型取りした石膏像も作られましたが、輸送中に失われたため、スケッチを元に複製が作られました。現在展示されている複製は、1980年に作られたものです。

複製品

2007年9月17日には、銀に金メッキを施した複製品が王立イェリン博物館から盗まれましたが、2日後に回収されました。1993年にも、モースゴー先史博物館に収蔵されていた別の複製品が盗まれましたが、間もなく発見されました。

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