黄金神社

黄金神社 (おうごんじんじゃ) の歴史

黄金神社は、台湾新北市瑞芳区金瓜石に位置する、かつて存在した神社です。正式名称は金瓜石社（きんかせきしゃ）といい、金瓜石神社、山神社とも呼ばれていました。現在は、金瓜石黄金博物園区内にその遺構が残っています。

神社の創建と発展

1895年、下関条約により台湾が日本に割譲された翌年、1896年（明治29年）に、日本の製鉄業者である田中長兵衛が金瓜石鉱山の経営権を取得しました。1898年（明治31年）、田中家によって、基隆山頂の東側の平坦な場所に流造の社殿が建立され、同年3月2日に鎮座祭が執り行われました。祭神は、大国主命、猿田彦命、そして鉱山の神とされる金山彦命の三柱です。

田中長兵衛は田中組を組織し、金瓜石鉱山の運営にあたりました。多くの日本人技術者を招聘し、鉱山の発展に尽力した結果、金瓜石は急速な発展を遂げました。黄金神社では、毎年盛大な「山神祭」が開催されていたと伝えられています。神社は1914年（大正3年）頃に現在の場所に移されました。

経営権の移転と神社の拡張

1925年（大正14年）に、田中家から後宮信太郎に経営権が移り、1933年（昭和8年）には、日本鉱業（現在のJX金属）が金瓜石鉱山を買収しました。台湾総督府が進める「一街庄一社」運動を受け、1936（昭和11）年4月には神社の敷地拡張が決定されました。翌年にかけて、拝殿・本殿の再建や休憩所・外苑の増築が行われました。

異例の祭祀

外地に作られた神社では、現地の神々が祭神として祀られることは稀でしたが、黄金神社では例外的に毎年旧暦三月に媽祖生誕祭が執り行われていました。これは、現地の人々の信仰を尊重した珍しい例といえます。

戦後の廃社と遺構

太平洋戦争後、黄金神社は廃社となり、社殿などは破却されました。しかし、社殿を支えていた柱や鳥居、燈籠などが今も残っており、当時の面影を伝えています。現在では、金運上昇のパワースポットとして多くの観光客が訪れるほか、当時の祭りを再現した「夏祭り（山神祭）」も開催されています。

文化遺産としての登録

2001年には、行政院文化建設委員会の台湾歴史建築百景に選出され、2007年には市の文化遺産（直轄市定古蹟）に登録されました。これは、黄金神社の歴史的価値と文化的な重要性が認められた結果といえます。

黄金神社は、鉱山開発の歴史と深く結びついた神社であり、その遺構は歴史を物語る貴重な存在です。また、現代ではパワースポットとして、多くの人々を魅了し続けています。

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