黒い九月

黒い九月（ブラックセプテンバー）

黒い九月（アラビア語: منظمة أيلول الأسود、英語: Black September）は、パレスチナの過激派組織であり、数々のテロ事件を引き起こしました。

概要

1960年代後半、ヨルダンに拠点を置いていたパレスチナ解放機構（PLO）の過激な行動に手を焼いた同国のフセイン1世国王は、1970年9月に発生したPFLP旅客機同時ハイジャック事件を契機に、PLO及び傘下の急進派・パレスチナ解放人民戦線の武力追放を決定しました。これがヨルダン内戦の勃発につながり、「黒い九月事件」とも呼ばれるこの内戦で、PLOは多くのメンバーを失い、拠点をレバノンのベイルートに移すことになりました。

PLOはフセイン国王の行為を裏切りとみなし、強く反発しました。その後、レバノンで活動を始めたPLOの最大派閥ファタハは、対イスラエル闘争の行き詰まりから、過激な活動を行うための秘密テロ組織を結成しました。これが「黒い九月」（ブラックセプテンバー）です。

黒い九月の存在は、1972年のミュンヘンオリンピック事件で一気に知れ渡りました。イスラエル選手とコーチが殺害されたこの事件は、イスラエルに大きな衝撃を与えました。イスラエル諜報特務庁（モサド）は報復として、黒い九月関係者の多くを暗殺しました。組織自体はファタハとの関係が明るみに出るや否や解散しました。

黒い九月が関与した主なテロ事件

1971年
11月28日：カイロを訪れていたヨルダン首相ワシフィ・アル・タルを暗殺。
12月：駐イギリスのヨルダン大使、前ヨルダン裁判所長ツェイド・アル・リファイの暗殺を試みるも未遂。
12月28日：在バンコクイスラエル大使館人質事件で大使館員6名を人質として立てこもる。交渉の結果、タイの副外務大臣と農業大臣が身代わりとなり、人質は解放。
1972年
2月：西ドイツの電力施設とオランダのガス施設に対する破壊工作。
5月：ウィーン発のサベナ航空572便をハイジャック。イスラエル特殊部隊が突入し、人質を救出（サベナ航空572便ハイジャック事件）。
9月5日：西ドイツのミュンヘンオリンピック会場に武装したメンバーが侵入、選手村にいたイスラエル選手とコーチ計11名を殺害（ミュンヘンオリンピック事件）。
1973年
3月1日：スーダンでサウジアラビア大使主催のパーティを襲撃。招待客のアメリカ大使クリオー・A・ノエル、同代理大使ジョージ・ムア、ベルギー代理大使ギー・アイドの3名を殺害。

黒い九月は、その短い活動期間にもかかわらず、世界中に大きな衝撃を与え、テロリズムの歴史に深く刻まれました。

関連項目

パレスチナ解放機構（PLO）
パレスチナ解放人民戦線（PFLP）
アリー・ハサン・サラーマ
サベナ航空572便ハイジャック事件
アレア (バンド) - この事件をテーマにした楽曲を発表。
アドルフに告ぐ - 作中に登場。

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