黒川村 (新潟県北蒲原郡)

新潟県胎内市の前身、黒川村：観光と農業が融合した村おこし

新潟県北東部、北蒲原郡の北端に位置していた黒川村は、2005年9月1日、中条町と合併して胎内市の一部となりました。本稿では、黒川村の歴史、地理、産業、そして独自の村おこし政策について詳述します。

豊かな自然と歴史的背景

黒川村は、二王子岳を望む山間部に位置し、胎内川が流れる自然豊かな地域でした。周辺には新発田市、中条町（現胎内市）、荒川町、関川村、そして山形県小国町と隣接していました。江戸時代には、黒川藩の陣屋が置かれ、街道の宿場町としても栄えていました。「黒川」という地名は、かつて原油が流れていたことに由来すると言われています。

村の変遷と災害

1889年の町村制施行により、黒川村は誕生しました。その後、周辺の町村と合併を繰り返しながら、1962年には村章が制定されました。しかし、1967年には羽越豪雨による鉄砲水が発生し、甚大な被害を受けました。死者・行方不明者26名という痛ましい災害を経験しています。その後も、中条町との境界変更や編入などを経て、2005年の合併に至ります。初代村長は全国最多となる12期連続当選を果たしたことで知られています。

活気ある産業と観光

黒川村は、畜産業が盛んで、ブランド牛である「胎内牛」や黒豚が特産品でした。東京・市ヶ谷に開設されたアンテナショップ「浪漫亭 新潟県黒川村東京役場」でも、ハムやソーセージなどの加工品が販売されていました。1999年には、村内で栽培されたホップと麦を原料とした村営地ビール工場を開設するなど、独自の取り組みを行っていました。ジャージー牛の乳製品やそばも特産品として知られています。

1965年のスキー場開設をきっかけに、胎内川沿いを中心としたリゾート開発が積極的に進められました。村が主体となって、ホテル、ビール園、ゴルフ場、クアハウスといった観光施設を建設・運営し、観光と農業を一体化した「観光農業」を推進しました。地元産品の消費・加工・販売を積極的に行い、地域経済の活性化に貢献しました。新潟製粉という第三セクター企業にも村が出資していました。

教育と交通

教育施設としては、黒川中学校、大長谷小学校、黒川小学校、鼓岡小学校がありました。交通面では、JR羽越本線が村域をわずかに通過していましたが、駅は設置されていませんでした。新潟交通北のバス路線と、奥胎内乗合バス（胎内交通運行）が運行していました。国道7号（中条黒川バイパス）や国道290号、そして県道の主要路線が整備されていました。道の駅「胎内」も設置され、地域交流の拠点となっていました。

観光資源と文化

胎内川沿いは、リゾート地として整備され、スキー場、ホテル（胎内パークホテル、ニュー胎内パークホテル、ロイヤル胎内パークホテル）、ビール園、フラワーパーク、昆虫の家、自然天文館、キャンプ場などが集積していました。また、クアハウスたいない、奥胎内ヒュッテなどの施設も村営で運営されていました。

歴史的な観光資源としては、蔵王権現遺跡、黒川城跡、臭水油坪などが挙げられます。毎年開催される「胎内星まつり」も、地域の文化イベントとして親しまれていました。

黒川村の軌跡

黒川村は、独自の村おこし政策と観光・農業の融合によって、発展を遂げました。48年間村長を務めた伊藤孝二郎氏の功績は、吉岡忍氏の著書『奇跡を起こした村のはなし』にも記されています。豪雨災害などの困難を乗り越え、地域活性化に貢献した黒川村の歴史は、現代社会においても貴重な教訓と示唆を与えてくれるでしょう。2005年の合併によってその歴史は胎内市へと引き継がれましたが、黒川村の精神は今もなお、地域に息づいていると言えるでしょう。

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