黒杖官

黒杖官とは

黒杖官（こくじょうかん）は、イギリス連邦の各国議会において重要な役割を果たす名誉職である。この職は、公式にはLady Usher of the Black Rod（女性の場合）またはGentleman Usher of the Black Rod（男性の場合）と呼ばれ、多くの場合単にBlack Rodと略される。黒杖官は、議会の儀礼や警備を担当し、国王や総督によって任命される。もともと1530年にイギリスの貴族院に設けられた職で、黒い杖を持つことからその名がついた。

イギリスの黒杖官の役割

イギリスにおける黒杖官は、上院の儀礼で非常に重要な役割を持つ。特に、議会開会式の際には、上院での国王演説のために庶民院（下院）に下院議員を召喚する使者の役割を果たす。この儀式では、黒杖官が現れると下院の扉が閉じられ、彼が扉を3回たたくと扉が開けられる。これは庶民院の独立を象徴する行為である。

さらに、黒杖官はガーター騎士団の事務長の役割も担う。議院内での紀律を維持するために議院警察権を行使し、院内の施設を管理する責任がある。彼は、議事堂内で秩序を乱す者を逮捕する権限を持ち、彼の職務は下院の守衛官と同等の権限を有する。上院区域内での業務を行う門衛や警察官は、黒杖官の指揮の下で職務を遂行する。近年では、2018年に女性で初めてサラ・クラークが黒杖官に任命されて注目を集めた。

イギリス以外の地域における黒杖官

イギリス以外にも、イギリス連邦の構成国において黒杖官と呼ばれる役職が存在する。オーストラリアでは、連邦議会や各州の二院制議会にもこの職が設けられている。2023年現在、オーストラリア議会の黒杖官はジョン・ペグリーである。カナダでも各州の議会は一院制であるにもかかわらず、全ての州に黒杖官が置かれている。

一方、ニュージーランドでは1951年に上院が廃止されたにも関わらず、黒杖官の役職は存続し、開会式では下院議員を先導する儀礼的な役割を担っているが、常勤ではなく非常勤の職である。さらに、アイルランド王国の貴族院にも黒杖官が存在し、1783年の聖パトリック騎士団の創設以降、両者の職務を兼任していた。アイルランド貴族院が1800年に廃止された後も、聖パトリック騎士団の黒杖官は引き続き任命されていた。

まとめ

黒杖官は、イギリス連邦における議会の儀礼と秩序維持において重要な役割を果たす職位である。その歴史的背景は古く、現在も多くの国で同様の職が存続している。これにより、議会の機能が円滑に運営され、伝統が守られることとなっている。

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