守衛官

守衛官：議会の秩序を守る要職

英米法を基盤とする国々の議会において、院内の秩序維持や施設管理を担う重要な役職に「守衛官（しゅえいかん）」があります。Sergeant at Arms とも呼ばれ、衛視総監や衛視長といった訳語も用いられます。本稿では、この守衛官の役割、権限、歴史、そして関連する制度について詳しく解説します。

イギリスおよびイギリス連邦諸国の守衛官

その語源は、ラテン語の「召使」を意味する serviens に遡り、中世イングランド王国の王室警護官職に由来します。15世紀、イングランド議会下院において、院内秩序の維持と警備を司る役職として初めて守衛官が設置されました。

国王によって任命される守衛官は、国王から議会に貸与された職員という位置づけです。職務の象徴として携える職杖（mace）は、王権の象徴であり、国王が下院の権利を承認した証でもあります。現在でも、議会の開会式では、守衛官は職杖を携えて国王の先導・警護を務めます。

議場では議長席近くに席を置き、議会の開催中は秩序維持にあたり、必要に応じて秩序を乱す者を排除する権限を持っています。下院の門衛やロンドン警視庁議会警備隊は、守衛官の指揮下にあります。さらに、近年では下院のオンラインシステム管理・運営も守衛官の担当となっています。

イギリス連邦諸国においても、多くの議会で同名の役職が置かれ、イギリスと同様の任命制度と権限を有しています。

アメリカ合衆国の守衛官

アメリカ連邦議会の上院と下院にも、イギリスにならって守衛官（Sergeant at Arms）が置かれています。アメリカでは門衛の制度はありませんが、議会警察が設置されており、上下両院の守衛官は議事堂警察委員会を構成し、議会警察の管理を行います。

守衛官の権限と役割

守衛官の権限と役割は、時代や国によって若干の違いはありますが、概ね以下の通りです。

秩序維持: 議場の秩序を維持し、議事妨害行為に対する対応を行います。必要であれば、議場からの排除も可能です。
施設管理: 議事堂や関連施設の管理・運営を監督します。
警備: 議事堂や議場の警備を監督し、警備員の指揮を行います。
儀典: 議会の儀式や式典への参加、国王や議長などの警護などを行います。
情報システム管理: 近年では、議会の情報システムの管理・運営も重要な役割となっています。

関連事項

守衛官の役割と密接に関連する事項として、以下のものが挙げられます。

議院警察権: 議会が持つ警察権。守衛官は、この警察権を行使する上で重要な役割を果たします。
黒杖官: イギリスの上院において、守衛官と類似の権限を持つ役職。
衛視: 議会の警備を担当する職員。守衛官の指揮下にあります。

本稿では、守衛官という重要な役職について、その歴史、権限、役割、そして関連制度を詳細に解説しました。彼らは、議会の円滑な運営に不可欠な存在であり、民主主義の維持に貢献していると言えるでしょう。

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