黒海コサック軍

黒海コサック軍の歴史

黒海コサック軍は、1787年にロシア帝国政府によって編成されたコサック軍であり、その起源はウクライナのコサックにさかのぼります。1775年にウクライナ・コサックの本拠地であるザポロージャのシーチが廃止された後、彼らは長い間その存在が脅かされていました。しかし、1787年に露土戦争が勃発したことを受け、ロシア政府は新たに軍を編成する必要に迫られました。これにより、「忠義なるコサック軍」として設立され、1788年にはエカチェリーナ2世の号令により「黒海コサック軍」と改名されました。

黒海コサック軍の創設時、ロシアはかつてウクライナ・コサックから奪った軍記や祭器、印鑑を返還したうえで、南ウクライナにおける領地を下賜し、コサックには内政自治が認められました。軍のオタマンとしてスィージル・ビールィイが選ばれ、行政の中心はスロボデジ町（今のモルドバの一部）に置かれました。また、ウクライナ・コサックの伝統に基づいて、軍の領地はクリーニと呼ばれる行政単位に分割されました。

1791年に露土戦争が終結すると、ロシア政府はカフカースでの領土拡張を狙い、1792年には黒海コサック軍をウクライナから北カフカースに接するクバーニ地方へ移住させる政策を実施しました。この移住により、コサック軍は約30,000平方キロメートルの新たな領地を与えられ、そこから黒海国境線を警備する任務を負うことになりました。コサックたちは40のクリーニと呼ばれる区域に分け、その後、19世紀半ばにはそれがスタニーツァに改名されました。主要な行政の中心地はカテルィノダールに設定され、以前のウクライナの町村名にちなんだ集落名の変更が行われました。

1792年から1793年にかけて、南ウクライナから約25,000人のコサックがクバーニに移住しました。また、1808年から1811年、1820年から1821年、1832年、1848年から1849年には、さらに77,000人がウクライナ各地を離れ、クバーニに向かいました。1860年にはクバーニ地方におけるウクライナ系コサックの人口が約20万人に達し、そこから12の騎兵連隊や数つの歩兵連隊、砲兵大隊が編成されました。

黒海コサック軍は1817年から1859年にかけてのカフカーズ戦争や1854年から1856年にかけてのクリミア戦争に参加しましたが、1860年にクバーニ・コサック軍と統合され、その独立した軍としての役割は終わりました。黒海コサック軍はロシア帝国の北カフカーズにおける植民地政策に寄与しましたが、ウクライナ人が多く在籍していたため、1917年のロシア革命後にはその末裔がロシアから独立したクバーニ人民共和国を宣言しました。また、彼らは同時に独立宣言したウクライナ人民共和国との合併を模索しました。

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