黒澤良彦

黒澤良彦（1921年 - 2001年）は、日本の昆虫学者として、特に甲虫研究において顕著な業績を残しました。東京に生まれましたが、父親の仕事の関係で米沢で育ち、自然に囲まれた環境が彼の昆虫への興味を育んだと考えられます。

学歴としては、山形高等学校を経て九州帝国大学に進学し、著名な昆虫学者である江崎悌三に師事しました。この時期に昆虫学の研究者としての基礎を築き、後の研究活動に大きな影響を与えました。

黒澤の業績として特筆すべきは、日本の天然記念物であるヤンバルテナガコガネを新種として記載したことです。これは、日本の昆虫相の解明に大きく貢献するものであり、彼の研究者としての才能を示すものでした。

1943年に山形高等学校を卒業後、九州帝国大学理学部動物学教室の研究補助員となり、研究者としてのキャリアをスタートさせました。その後、1951年には国立科学博物館の職員となり、長年にわたり同館で研究活動に従事しました。国立科学博物館動物研究部長も務め、日本の動物研究の発展に尽力しました。

1954年には、甲虫談話会（後の日本鞘翅学会）を設立し、代表世話人として日本の甲虫研究の発展に貢献しました。この学会は、甲虫研究者にとって重要な情報交換の場となり、多くの研究者を育成する役割を果たしました。

1962年には、九州大学から農学博士の学位を取得しました。博士論文のテーマは「樺太、日本、琉球列島及び小笠原諸島産タマムシ科の研究 」であり、彼のタマムシ研究における深い知識と卓越した研究能力を示しています。

1986年に国立科学博物館を定年退官した後も、研究活動を続け、1990年には日本鞘翅学会の名誉会員となりました。これは、彼の長年の甲虫研究への貢献が認められたものであり、名誉ある称号と言えるでしょう。

2001年に黒澤良彦は生涯を閉じましたが、彼の残した業績は、日本の昆虫学の発展に大きく貢献しています。特に、ヤンバルテナガコガネの新種記載や、甲虫談話会の設立など、彼の活動は多岐にわたり、日本の昆虫研究に大きな足跡を残しました。

著書

『昆虫の図鑑』野村健一・中山周平共著、講談社の学習大図鑑、1958年。
『世界の蝶 原色図鑑』中原和郎共著、北隆館、1958年。
* 『原色昆虫百科図鑑』日高敏隆共編、小学館、1967年。

これらの著書は、一般の人々にも昆虫への興味を持ってもらうきっかけとなり、昆虫学の普及にも貢献しました。特に、図鑑は、美しい写真やイラストとともに、昆虫の生態や分類についてわかりやすく解説されており、多くの人々に親しまれています。

黒澤良彦は、研究者としてだけでなく、教育者としても優れた才能を発揮し、多くの後進を育成しました。彼の指導を受けた研究者たちは、現在も日本の昆虫学の第一線で活躍しており、彼の遺志を受け継いでいます。

黒澤良彦の生涯は、日本の昆虫学の発展とともにあり、彼の業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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