黒田チカ

黒田チカ：日本の先駆的な女性化学者

黒田チカ（1884年3月24日 - 1968年11月8日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の化学者です。彼女は、植物色素、特に紅花の構造研究において多大な功績を残し、日本の化学界における女性の地位向上に大きく貢献しました。お茶の水女子大学名誉教授であり、紫綬褒章や勲三等宝冠章を受章しています。

生涯

佐賀県佐賀市で生まれた黒田チカは、「これからは女子にも教育が必要」という両親の考えのもと、教育の道へと進みます。佐賀県師範学校女子部を卒業後、小学校教員を経て上京し、女子高等師範学校理科に進学しました。1913年には、東北帝国大学（現・東北大学）理科大学化学科に入学し、日本初の帝国大学女子学生の一人となります。1916年に同学科を卒業し、日本女性初の理学士となりました。

研究活動

黒田チカの研究は、天然色素の構造決定に焦点を当てていました。特に、紅花に含まれる色素であるカーサミンの構造決定に成功し、1929年に理学博士号を取得しました。これは、保井コノに続く女性理学博士第2号という快挙でした。また、タマネギに含まれるケルセチンに血圧降下作用があることを発見し、ケルチンCとして市販されました。

彼女は、文部省外国留学生として英国オックスフォード大学へ留学し、海外での研究経験も積んでいます。帰国後はお茶の水女子大学で教鞭を執りながら、理化学研究所でも研究に取り組みました。

教育活動

黒田チカは、教育者としても熱心でした。東京女子高等師範学校や、新設されたお茶の水女子大学で教鞭を執り、多くの女性研究者を育成しました。彼女の指導を受けた学生たちは、各方面で活躍し、日本の科学技術の発展に貢献しました。

功績

黒田チカの功績は、以下の点で高く評価されています。

天然色素の構造決定：特に紅花色素カーサミンの構造を明らかにしたこと。
女性研究者の育成：多くの女性研究者を育成し、日本の科学界における女性の地位向上に貢献したこと。
日本初の女性理学士：帝国大学で学び、理学の学位を取得した初の女性であること。

これらの功績が認められ、2013年には日本化学会が黒田チカの天然色素研究関連資料を化学遺産に認定しました。

人柄・エピソード

黒田チカは、研究に対する情熱と、後進育成への熱意にあふれた人物でした。NHKの子供向けドラマ「たまねぎおばさん」は、彼女を主人公としたもので、市原悦子が黒田を演じました。

晩年

1952年にお茶の水女子大学を退官後も、研究活動を続けました。1968年11月8日、福岡で逝去。享年84歳。その功績を称えられ、従三位が贈られました。

著作物

黒田チカは、多数の研究論文を発表しています。主な著作物としては、以下のものがあります。

紫根の色素につきて
紅花の色素カーサミン
ナフトキノン誘導体の研究
* 化学に親しむ悦びと感謝

まとめ

黒田チカは、日本の化学界における先駆的な女性研究者であり、教育者でした。彼女の功績は、天然色素の研究にとどまらず、女性の社会進出を後押しし、次世代の研究者を育成したことにもあります。その生涯は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

もう一度検索