黒野検車区

黒野検車区

黒野検車区（くろのけんしゃく）は、かつて名古屋鉄道（名鉄）が岐阜県揖斐郡大野町黒野に設けていた車両基地です。「黒野車庫」とも称されていました。この施設は、名鉄揖斐線の終点駅であった黒野駅の構内に位置していました。

役割と機能

黒野検車区は、名鉄の岐阜地区における600V線区のうち、特に鉄道路線である揖斐線や谷汲線で運用されていた車両の主要な拠点でした。主に、日常的な点検整備や、運用を終えた車両の留置場所として機能していました。

この検車区が受け持っていたのは、750形、510形、770形、780形といった形式の電車たちです。これらの車両は、岐阜市内線と直通する運用などで活躍していましたが、黒野検車区は彼らの「ねぐら」であり、日々安全に運行するための手入れを行う重要な役割を担っていました。

また、電車だけでなく、バラスト（線路に敷かれる砂利）の運搬などに使用される貨車も常時配置されていました。具体的には、ト14形やト15形といった無蓋貨車が留置されており、保守作業に必要な資材輸送にも貢献していました。

検車区内には、車両を雨風からしのぐための木造の屋根付き車庫も存在していました。しかし、大規模な車両検査（車検）や、車両構造に手を加えるような改造作業を行うための設備は備えていませんでした。そのため、これらのより専門的な作業は、名鉄の別の車両基地である岐阜検車区まで回送して実施されていました。

沿革

黒野検車区の歴史は、1926年（大正15年）4月6日に始まります。この日、美濃電気軌道（後の名鉄）の北方線が北方駅から黒野駅まで延伸開業しました。同時に、黒野駅から谷汲駅を結ぶ谷汲鉄道も開業しています。これら二つの鉄道路線が接続する交通の要衝となった黒野駅に、車両基地として車庫と検車区が一体的に設置されたのが始まりです。

開設以来、揖斐線や谷汲線の車両基地として長年にわたり運用されてきました。2001年（平成13年）10月1日には、名鉄岐阜地区の路線網再編の一環として、谷汲線全線（黒野駅 - 谷汲駅）と、揖斐線の一部区間（黒野駅 - 本揖斐駅）が先行して廃止されました。しかし、この時点では揖斐線の残存区間（忠節駅 - 黒野駅間）が引き続き運行されていたため、黒野検車区はその区間の車両基地として運用が続けられました。

しかし、岐阜地区の600V線区全体の合理化が進む中で、残存していた揖斐線の忠節駅 - 黒野駅間も廃止されることが決定しました。そして、2005年（平成17年）4月1日の揖斐線全線廃止に伴い、黒野検車区もその役目を終え、閉鎖されました。開設から約79年間にわたり、揖斐線や谷汲線の運行を支え続けた施設は、この日をもって静かに姿を消したのです。

この閉鎖により、名鉄の岐阜地区における車両基地は、岐阜検車区のみとなりましたが、その後2005年7月に岐阜600V線区自体が全廃されたため、現在は岐阜県内に名鉄の車両基地は存在していません。黒野検車区は、かつて岐阜県の西濃地域で活躍した名鉄のローカル線を物語る、歴史的な施設の一つと言えるでしょう。

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