岐阜検車区

岐阜検車区の概要

岐阜検車区（ぎふけんしゃく）は、名古屋鉄道が過去に岐阜県岐阜市市ノ坪町に保有していた車両基地です。名鉄住商工業の岐阜工場が併設されていたことから、「名鉄岐阜工場」という呼称でも知られていました。この施設は、田神線の市ノ坪駅から田神駅にかけての区間に位置しており、その敷地面積は約17,000平方メートルに及びました。主に名鉄の岐阜地区に存在した、軌道線や鉄道線からなる600V線区で使用される車両のメンテナンスを担当していましたが、2005年（平成17年）4月1日に岐阜地区の600V線区が全廃されたことに伴い、その役割を終えて閉鎖されました。

担っていた業務

岐阜検車区は、名古屋鉄道の岐阜地区を走る600V線区の車両整備を一手に担っていました。対象となったのは、美濃町線、岐阜市内線、田神線といった軌道線の路面電車や、通常はこれらの軌道線には乗り入れない揖斐線や谷汲線用の鉄道線車両（例えば750形など）です。ここでは、車両の日常的な点検や月ごとに行う検査はもちろんのこと、大規模な全般検査や車両の改造工事まで実施されていました。ただし、1997年（平成9年）以降は、車両から取り外された機器類の全般検査や重要部検査については、愛知県にある舞木検査場が担当する体制となりました。

施設閉鎖後の活用と現在の状況

2005年の600V線区廃止に伴い閉鎖された後も、岐阜検車区の敷地はすぐには解体されませんでした。これは、廃止された路線で使用されていた車両（590形、770形、880形、780形、800形など）が日本各地の他の鉄道事業者へ譲渡されることになり、それに必要な改造工事を行うための工場として引き続き利用されたためです。また、岐阜市内線が廃止される以前には、福井鉄道に譲渡された600形・610形電車（これらは元々名古屋市営地下鉄名城線の1000形・1100形電車でした）の改造工事もここで行われています。最終的には、役目を終えた車両の廃車置場としても活用されましたが、2007年（平成19年）頃までには敷地内の線路はすべて撤去され、完全に更地となりました。この更地となった土地は、後に株式会社善都によって取得され、現在ではパチンコ店「ZENT市ノ坪」が建てられています。

岐阜検車区の歴史的な変遷

岐阜検車区のルーツは、現在の市ノ坪町ではなく、過去に何度か場所を移しています。始まりは1911年（明治44年）に、前身である美濃電気軌道が岐阜市梅林（現在の名鉄各務原線梅林駅付近）に設置した車庫でした。その後、1918年（大正7年）には岐阜市長住町（現在の名鉄岐阜駅北側あたり）へ移転しました。そして、1967年（昭和42年）になって、最終的な所在地となる岐阜市市ノ坪町へ移転し、2005年に閉鎖されるまでその場所で機能していました。

市ノ坪移転後の運用と関連情報

長住町に車庫があった時代には、岐阜市内線の新岐阜駅前駅から専用の引込線が敷設されていました。この引込線からは、現在の各務原線に繋がる線路も分岐していましたが、これらは主に車両の転属などによる搬出入に使用されるもので、旅客を乗せた営業列車が乗り入れることはありませんでした。岐阜工場が市ノ坪へ移転した後も、各務原線の新岐阜駅構内への引込線自体は残されていましたが、後に各務原線との接続は断たれ、車両の留置線としてのみ利用されるようになりました。市ノ坪への移転後、岐阜市内線は車両基地に直接接続しない形になりました。そのため、岐阜市内線で使用される車両は、数日おきに検査のために美濃町線や田神線の徹明町～市ノ坪間を回送列車として往復する必要がありました。それ以外の時間は、新岐阜駅構内の留置線や忠節駅構内で夜間滞泊することが多かったようです。ちなみに、600V線区のうち鉄道線車両の日常点検については、黒野駅に隣接していた黒野検車区で行われていました。2006年（平成18年）に岐阜検車区の跡地で土壌調査が行われた際には、環境基準と比較して鉛が最大87倍、フッ素が最大1.5倍、ダイオキシン類が最大1.1倍という検出値が報告されています。ただし、付近の河川への汚染物質の流出は確認されませんでした。なお、同じ岐阜市内には、名古屋本線の茶所駅と岐南駅の間にも車両基地が存在しますが、こちらは茶所検車支区という別の施設です。

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