黙示録3174年

『黙示録3174年』

『黙示録3174年』（原題：A Canticle for Leibowitz）は、アメリカの作家ウォルター・M・ミラー・ジュニアによるSF小説で、1959年に初版が出版され、1961年にはヒューゴー賞を受賞しました。この作品は、ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション誌に掲載された連作短編を基にしており、全三部からなる連作中編の形式を取っています。ミラーが作家として活動していた時期に発表された唯一の長編作品でもあります。

プロット概要

物語は、冷戦時代の初期に設定されています。全面核戦争による文明の崩壊が舞台であり、この作品はアフターホロコーストというサブジャンルに位置づけられます。核戦争後、再興した文明が再び核戦争を引き起こすという循環する運命が描かれており、全体にわたって諦めや失望が漂っていますが、希望も垣間見えます。

特に、ミラーのカトリック信仰が作品に色濃く反映されており、カトリック教会が物語の中心的存在となります。教会は世俗の権力や価値観と対立しながら描かれ、堕落に無縁の理想的な存在として表現されています。また、核戦争の世相も巧みに取り入れられています。

作品中には、ラテン語の句が多く登場し、翻訳版では日本語で片仮名で示されています。これにより、読者に宗教的な雰囲気が伝わってくるでしょう。

物語の構成

第I部『人アレ』(Fiat Homo)

物語は20世紀、全面核戦争『火焔異変 (Flame Deluge)』の勃発から始まります。その後、生存者たちが科学技術を憎み、知識人を迫害する『単純化運動 (Simplification)』が起こります。フランシス・ジェラードという修道士は、リーボウィッツ修道院を創設したアイザック・エドワード・リーボウィッツの聖遺物を発見しますが、その発見によって新たな悲劇が訪れます。

第II部『光アレ』(Fiat Lux)

3174年、科学文明の再興が見え始めた時代、タデオ・ファーデントロット博士は、リーボウィッツ修道院の『大記録』を調査し、古代の知識を再発見します。しかし、彼の研究がただの再発見に過ぎないことに失望し、修道院長と対立することに。科学と宗教の関係が深く掘り下げられる一方で、軍事国家の脅威も漂っています。

第III部『汝ガ意志ノママニ』(Fiat Voluntas Tua)

3781年、文明はかつて以上に復興し、恒星間移民が実現されていました。しかし、新たな戦争が勃発し、核兵器が使用される中で、修道院長は安楽死や道徳的苦悩に直面します。この部ではクリトリックな状況の元、彼の運命と人類の未来が描かれます。物語の最終的な結末は、希望と絶望が交錯する非常に象徴的なものです。

作品の影響と続編

『黙示録3174年』は、SF文学の重要な作品の一つとして、多くの読者に影響を与えています。1997年、この作品の続編である「Saint Leibowitz and the Wild Horse Woman」がテリー・ビッスンによって完成されました。これは第II部の約80年後の物語で、より深いテーマが探求されています。

この小説は、核戦争という現代的な問題と宗教的な信念を結びつけ、深い洞察を与える貴重な資源として現在も読み継がれています。

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