齋藤愼爾

齋藤愼爾：俳句、文芸評論、編集の多才な足跡

齋藤愼爾（さいとう しんじ）は、1939年8月25日に生まれ、2023年3月28日に83歳で逝去した、日本の俳人、編集者、そして文芸評論家です。彼の生涯は、俳句の世界にとどまらず、文芸評論や編集の分野でも多大な影響を与えました。

生い立ちと俳句との出会い

齋藤は朝鮮京城府（現在の韓国ソウル市）で生まれ、1946年に山形県の飛島に移住しました。高校時代から俳句を制作し始め、1955年には秋沢猛、秋元不死男に師事し、秋元が主宰する俳誌「氷海」に投句を始めました。1959年には「氷海賞」を受賞し、その才能は「孤島の寺山修司」と称賛されました。しかし、翌年から20年以上にわたり句作を中断します。

編集者、文筆家としての活動

山形大学文理学部国文科を中退後、1963年に深夜叢書社を設立し、出版活動を開始しました。1973年には、堀井春一郎らと共に季刊誌『季刊俳句』を創刊し、俳句界に新たな風を吹き込みました。1983年には、寺山修司らと雑誌「雷帝」を創刊するために句作を再開し、50歳を過ぎてからは文筆活動にも力を入れるようになります。

受賞と評価

齋藤の文筆活動は高く評価され、2010年には『ひばり伝　蒼穹流謫』で芸術選奨文部科学大臣賞を、2013年には『周五郎伝　虚空巡礼』でやまなし文学賞を受賞しました。また、法政大学文学部の講師や、芝不器男俳句新人賞の選考委員も務め、後進の育成にも尽力しました。

その他の活動と晩年

2004年には、車谷長吉の私小説「刑務所の裏」で名誉を傷つけられたとして提訴しましたが、後に和解しています。2023年3月28日に亡くなるまで、その旺盛な活動は衰えることがありませんでした。

著作

齋藤愼爾は、俳句集、評論集、編著など多数の著作を出版しています。主な著作には、俳句集として『斎藤慎爾集 秋庭歌』、『冬の智慧』、『春の羇旅』、『齋藤愼爾全句集』、『永遠と一日』、『陸沈』などがあります。また、評論集として『偏愛的名曲事典 文学と音楽の婚姻』、『読書という迷宮』、『暗愁は時空を超えて 五木寛之紀行』、『寂聴伝 良夜玲瓏』、『ひばり伝　蒼穹流謫』、『周五郎伝　虚空巡礼』、『続 寂聴伝 拈華微笑』、『逸脱する批評―寺山修司・埴谷雄高・中井英夫・吉本隆明たちの傍らで』があります。編著には、『財界歳時記 自選俳句集』、『徳川夢声の世界 対談『問答有用』』、『司馬遼太郎の世紀』、『埴谷雄高・吉本隆明の世界』、『武満徹の世界』、『吉行エイスケとその時代 モダン都市の光と影』、『必携季語秀句用字用例辞典』、『太宰治・坂口安吾の世界 反逆のエチカ』、『現代俳句の世界』、『生と死の歳時記 美しく生きるためのヒント』、『岡本太郎の世界』、『三井葉子の世界 <うた>と永遠』、『俳句殺人事件 巻頭句の女』、『明治文学の世界 鏡像としての新世紀』、『漂泊者のノート 思うことと生きること』、『短歌殺人事件 31音律のラビリンス』、『永遠の文庫〈解説〉名作選』、『〈武蔵〉と吉川英治 求道と漂泊』、『二十世紀名句手帖』、『永遠の文庫〈解説〉傑作選』、『吉本隆明入門』、『大衆小説・文庫〈解説〉名作選』、『春日井建の世界 〈未青年〉の領分』、『塚本邦雄の宇宙 詩魂玲瓏』、『現代詩殺人事件 ポエジーの誘惑』、『サザエさんの〈昭和〉』、『キネマの文學誌』、『久世光彦の世界 昭和の幻景』、『吉本隆明に関する12章』、『飯田龍太の時代 山盧永訣』、『時よとまれ、君は美しい スポーツ小説名作集』、『阿久悠のいた時代 戦後歌謡曲史』などがあります。

関連人物

齋藤の活動は、寺山修司、五木寛之、瀬戸内寂聴など、多くの文化人との交流を通じて、より豊かなものとなりました。

結び

齋藤愼爾は、俳人、編集者、文芸評論家として、その多岐にわたる才能を発揮し、日本の文学界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に読まれ、その影響は計り知れません。

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