1セント硬貨 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国1セント硬貨（ペニー）

アメリカ合衆国で流通する1セント硬貨は、通称「ペニー」として親しまれています。1ドルの100分の1の価値を持ち、その歴史は長く、デザインや素材に様々な変遷が見られます。

デザイン

硬貨の表面には、1909年の発行以来、エイブラハム・リンカーンの肖像が描かれています。これは、リンカーン生誕100周年を記念したものでした。裏面は、1959年からリンカーン記念館がデザインされていましたが、2010年からは「リンカーン・ユニオン・シールド」に変更されています。硬貨のサイズは直径約19.05ミリメートル、厚さ約1.55ミリメートルです。

材料の変遷

1943年には、第二次世界大戦中の銅不足のため、亜鉛メッキを施した鋼鉄製の1セント硬貨が一時的に製造されました。また、ごく少数ですが、1942年の素材板を使用した銅製の硬貨も存在します。その後、1970年代初頭には銅の価格高騰により、アルミニウムや青銅合金のテストが行われましたが、最終的に流通には至りませんでした。現在では、銅メッキされた亜鉛が使用されています。

金属価値と製造コスト

2007年の時点で、銅価格が1ポンドあたり3.39ドル、亜鉛価格が1.67ドルでした。この時、1982年以前に製造された銅製セント硬貨は、溶解して売却すれば利益が出るほどの銅を含んでいましたが、連邦政府は硬貨の溶解や輸出を規制しました。現在、1セント硬貨の金属価値は額面を下回っていますが、製造コストはそれを上回る状態です。

デザインの変遷

1セント硬貨は、約200年の歴史の中で様々なデザイン変更が行われてきました。1857年以前は、現在よりも大きなサイズでした。

主なデザイン

ラージセント（大型硬貨、1857年まで）
フロウイング・ヘア・チェイン (1793年)
フロウイング・ヘア・リース (1793年)
リバティ・キャップ (1793年〜1796年)
ドレイプト・バスト (1796年〜1807年)
クラシック・ヘッド (1808年〜1814年)
コロネット (1816年〜1839年)
ブレイデッド・ヘア (1839年〜1857年)
スモールセント（小型硬貨、1857年以降）
フライング・イーグル (1856年〜1858年)
インディアン・ヘッド (1859年〜1909年)
リンカーン・ホイート (1909年〜1958年)
リンカーン・メモリアル (1959年〜2008年)
リンカーン200周年デザイン4種 (2009年)
リンカーン・ユニオン・シールド (2010年〜)

リンカーン・セントの製造年表示には、フォントの変遷も見られます。数字の「3」は、初期には他の数字と同じサイズでしたが、1934年以降、下へ突き出した字体に変更されました。

リンカーンと硬貨デザイン

2008年まで、硬貨の裏面にはリンカーン記念館が描かれていました。貨幣学の専門家は、リンカーンがアメリカの硬貨で表裏両面に描かれた唯一の人物であると述べていますが、後に他の人物も両面に描かれた硬貨が登場しました。

記念デザインと現在

2009年には、リンカーン生誕200周年を記念して4種類の記念デザインが発行されました。2010年以降は、裏面が「リンカーン・ユニオン・シールド」に統一され、現在に至っています。

廃止論議

1セント硬貨の廃止を求める声は根強くあります。その理由は、

クレジットカード決済が主流で、1セント硬貨がほとんど使われないこと。
自動販売機が受け付けない場合が多いこと。
製造コストが額面を上回ること。

などが挙げられます。カナダやオーストラリアでは、既に1セント硬貨が廃止されています。

アメリカ議会での動き

過去には、1セント硬貨の製造中止を求める法案が提出されたこともありました。しかし、国民の大多数は1セント硬貨の存続を望んでおり、その背景には実用性だけでなく、愛着心も影響していると指摘されています。

貨幣廃止の世界的な流れ

世界的に見ると、最小単位の貨幣を廃止する動きが見られます。カナダでは2013年に1セント硬貨が廃止されました。

その他

青銅、銅、亜鉛で作られたセント硬貨は、指で弾いたときの音で区別できます。銅製は12キロヘルツの音が響き、亜鉛製はあまり響きません。

1セント硬貨は、その歴史とデザインの変遷を通じて、アメリカの文化と経済を象徴する存在と言えるでしょう。

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