1,2-ジクロロエタン

1,2-ジクロロエタン：性質、製造、用途、および安全性

1,2-ジクロロエタン（1,2-Dichloroethane、DCE）は、別名二塩化エチレン（ethylene dichloride、EDC）とも呼ばれるハロゲン系炭化水素です。クロロホルムに似た臭気を有する無色の液体で、様々な用途を持つ重要な有機化合物です。

製造方法

DCEは主に、触媒として塩化鉄(III)を用い、エチレンと塩素を反応させることで製造されます。この反応は、以下の化学式で表されます。

H₂C=CH₂ + Cl₂ → Cl-CH₂-CH₂-Cl

また、塩化水素、酸素、そして塩化銅(II)触媒を用いる方法も存在します。この方法は、以下の化学式で表されます。

H₂C=CH₂ + 2HCl + 1/2O₂ → Cl-CH₂-CH₂-Cl + H₂O

これらの反応で生成された塩化水素は、効率的な製造プロセスのため、再利用されます。

用途

DCEの世界生産量の約80％は、塩化ビニルモノマーの製造に使用されます。塩化ビニルモノマーは、ポリ塩化ビニル（PVC）の原料となります。DCEから塩化ビニルモノマーへの変換は、以下の反応式で表されます。

Cl-CH₂-CH₂-Cl → H₂C=CHCl + HCl

この反応で副生する塩化水素は、DCEの製造工程に再利用されます。

DCEは優れた非極性非プロトン性溶媒としての特性も持ち、洗浄剤やペンキ除去剤などにも用いられます。さらに、様々な有機化合物の合成における反応中間体としても重要な役割を果たします。

過去には、1,2-ジブロモエタンやジクロルボスとの複合殺虫剤として使用されていましたが、現在ではその登録は失効しています。

安全性と規制

DCEは動物実験において中程度の急性毒性を示し、ヒトの経口致死量は30～50gと推定されています。引火性が高く、発がん性も懸念されているため、取り扱いには細心の注意が必要です。

[国際がん研究機関]では、DCEをグループ2B（ヒトに対する発癌性が疑われる）に分類しており、多くの国で労働安全衛生法に基づく規制が設けられています。

これらのことから、DCEの取り扱いには適切な安全対策と、法規制の遵守が不可欠です。 適切な換気、保護具の使用、そして廃棄物の適切な処理が求められます。

まとめ

1,2-ジクロロエタンは、塩化ビニル生産において重要な役割を果たす一方で、健康と環境へのリスクも伴う化合物です。その特性、製造方法、用途、そして安全性に関する情報を理解し、適切に取り扱うことが重要です。 今後の研究開発により、より安全で環境負荷の少ない代替物質の開発が期待されます。

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