エチレン

エチレンについて

エチレン（ethylene）は、IUPAC命名法による名称エテン（ethene）でも知られ、分子式はC2H4、構造式はCH2=CH2という最も単純な炭化水素で、二重結合を持つアルケンの一種です。エチレンの持つ二重結合は、化学反応において重要な役割を果たし、特に化学工業において他の有機化合物と比較してエチレンの利用量が非常に多いことが特徴です。

構造

エチレンの構造は、二つの炭素原子の間にσ結合とπ結合が形成されています。これらの結合は、σ結合がsp2混成状態の電子により前面で形成され、π結合はp軌道の未混成電子によって側面で結成されます。特にσ結合は非常に強固である一方、π結合は容易に切断されるため、エチレンは回転が不可能です。この性質により、エチレン誘導体はシス-トランス異性体を生成することがあります。エチレンは平面的な構造を持ち、結合角は約120度となっています。

性質と反応

エチレンは無色の気体で、微かな甘い匂いを持ち、反応性が高い強力な酸化剤であり、非常に引火しやすい物質です。工業的なプロセスでは、チーグラー・ナッタ触媒を用いてエチレンを重合させることでポリエチレンが得られます。さらに、エチレンは様々な化合物の前駆体としての役割も担っており、例えばアセチレンはエチレンとハロゲンを反応させて生成されます。また、エタノールは160-170℃の条件でエチレンを脱水して得ることが出来、ワッカー酸化を通じてアセトアルデヒドが生成されることもあります。

水和反応

エチレンは水和反応を経てエタノールを生成しますが、これには高温高圧の条件が必要です。水和は工業的なアルコール製造の一つの方法として利用されています。直接水和法と間接水和法が存在し、いずれの方法でもエチレンからエタノールが生成されます。

工業的製法

日本では、ナフサや他の炭化水素と水蒸気を混合し、800～900℃の高温で熱分解することでエチレンが生産されます。このプロセスによって得られたエチレンはエチレンプラントと呼ばれる工場から供給され、2016年には国内生産量が6,278,821トンに達しました。この他にも、中東やアメリカでは天然ガス中のエタンを分解する方法が用いられています。

工業用途

エチレンは石油化学製品の基本的原料として不可欠であり、塩化ビニル、アクリルニトリル、酢酸ビニルなど、数多くの製品がエチレンを基にして作られています。

植物におけるエチレン

植物内ではメチオニンからエチレンが合成される過程があり、エチレンは植物ホルモンの一種としても機能しています。エチレンは一般に植物の成長を制限し、花芽の形成を抑制します。しかし、ジャガイモのような植物の場合、エチレンは萌芽を抑制しますが、一方で特定の植物では花芽形成を促進する特性も持っています。また、エチレンは果実の成熟、色づき、軟化に関与し、これは細胞壁を破壊する作用によるものです。

国別の生産量

日本には12基のエチレン生産設備が存在し、茨城県や千葉県などに点在しています。工業的な生産体制の下、エチレンは多岐にわたる用途と応用のために必要不可欠な化学物質です。

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