1-ヒドロキシベンゾトリアゾール

1-ヒドロキシベンゾトリアゾール（HOBt）

1-ヒドロキシベンゾトリアゾール（1-hydroxybenzotriazole、略称HOBt）は、有機合成において特にアミド結合を形成する反応で頻繁に使用される重要な試薬です。白色結晶のこの化合物は、融点158℃を持ち、分子量は135.13です。また、CAS登録番号は2592-95-2です。

HOBtの役割

アミド結合生成反応において、HOBtは主にカルボジイミド系の縮合剤と併用されます。従来のカルボジイミドだけでも反応は進むものの、HOBtを適切に加えることで反応の速度を向上させられることが確認されています。特にアミノ酸を用いる際には、ラセミ化を防ぐ助けにもなります。これは、カルボジイミドから生成されるHOBtエステルがアミンと反応することで、アミド結合を安全に形成するからです。特に、フラグメント縮合と呼ばれる反応においては、HOBtの使用が効果的であり、ラセミ化の発生を大幅に抑える結果が得られます。

用法

アミドを生成する際は、カルボン酸、アミン、カルボジイミド、HOBtを1当量ずつ準備します。これらを適当な溶媒（例: DMF、ジクロロメタン、N-メチルピロリドンなど）に溶解し、室温で撹拌するだけで、高収率でアミドが得られる場合が多いです。ただし、反応終了後のHOBtの除去には注意が必要で、水を用いるのではなく、飽和重曹水などで洗浄することが推奨されています。

関連試薬

HOBtに替わって使用される試薬もいくつか存在します。N-ヒドロキシスクシンイミド（HOSu）は、その一例です。HOSuもアミド結合形成に利用できるものの、反応速度やラセミ化抑制においてはHOBtに劣りますが、反応後に水洗だけで取り除ける利点や、安定性が高く長期保存が可能な点でメリットがあります。

もう一つは1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール（HOAt）です。この試薬はHOBtのベンゼン環がピリジン環に置換された構造を持ち、反応時にアミンをより効果的に引き寄せることができます。そのため、アリールアミンなど反応性の低いアミンに対しても良い結果を得やすい点が特徴です。

さらに、BOP試薬はHOBtエステルを通じてアミド結合を形成するための縮合剤の一つで、反応性が高いことから多くの有機合成に利用されています。しかし、BOP試薬は副生成物として発がん性の強いHMPAを生成するため、これを改善したPyBOP、HBTU、TBTUなど、さらにはHOAtと組み合わせたHATU、TATUなど、多くの派生化合物が開発され、一般に入手可能です。

注意点

HOBtを取り扱う際には注意が必要です。無水のHOBtは爆発性があり、加熱すると危険な爆発を引き起こすことがあります。そのため、大量に使用する場合や高温環境での使用時には、一水和物を用いることで安全性を高めることが推奨されます。

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