10フィート運動

10フィート運動の概要

10フィート運動は、1980年に日本で始まった住民参加型の反核・反戦活動です。この運動は、第二次世界大戦後の広島と長崎に投下された原子爆弾にまつわる記録フィルムの重要性を認識し、これを購入して記録映画を製作することを目的としています。特に、戦争の悲劇と核兵器の恐ろしさを広く社会に伝えることが主な意義となっています。

活動の背景

アメリカの米国戦略爆撃調査団が広島と長崎で撮影した原爆記録フィルムは、その後、約85,000フィートもの量に及び、現在はアメリカ国立公文書記録管理局などで保管されています。10フィート運動は、こうしたフィルムを一部市民の寄付によって購入し、教育や啓発活動に活用する取り組みです。具体的には、1人あたり3000円の寄付を募り、10フィートずつ買い取ることで運動の名称がつけられました。

運動の発展

広島大学平和研究センターに所属する研究者たちが中心となってこの運動を推進し、その中でも永井秀明氏や岩倉務氏が重要な役割を果たしました。1982年に第1作『にんげんをかえせ』が完成し、続いて第2作『予言』も制作されました。これらの作品は、1982年に欧米で行われた公開ツアーを通じて、8か国14都市で上映され、多くの観客に原爆被害者の思いと核兵器の廃絶を訴えました。

特に、被爆者の沼田鈴子氏がツアーに同行し、自らの体験を通じて反戦と反核のメッセージを発信したことは各地で大きな反響を呼びました。彼女の存在により、運動はより多くの人々の心に訴えかけ、影響を与えました。

映画の受賞歴

『にんげんをかえせ』は1984年度アメリカン・フィルムフェスティバルでブルーリボン賞を受賞し、『予言』も1983年度に同フェスティバルのレッドリボン賞を獲得しました。これらの受賞は、運動の意義と活動が国際的にも認知されている証拠と言えます。また、この運動自体も1980年度に日本ジャーナリスト会議の特別賞を受賞するなど、さまざまな形で評価されています。

10フィート運動の意義

この運動は、ただの記録映画の製作にとどまらず、核兵器の問題に対する意識を高め、平和を求める声を広げる重要な役割を果たしてきました。多くの市民が参加することで、運動は地域や世代を超えて広がり、反核・反戦の意識を根付かせるための重要な一歩となっています。10フィート運動は、今もなお影響力を持ち続け、多くの人々に思考を促しています。

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