12月の雨の日/はいからはくち

はっぴいえんどのシングル「12月の雨の日 / はいからはくち」は、1971年4月1日に発売され、日本の音楽シーンに大きな足跡を残しました。このシングルは、単なるアルバム収録曲のシングルカットではなく、それぞれが独自のバージョンとして再録音されたという点で特筆されます。

背景

「12月の雨の日」と「はいからはくち」は、それぞれアルバム『はっぴいえんど』と『風街ろまん』に収録されていますが、シングル・バージョンはアルバムとは異なるテイクで制作されました。これらのシングル・バージョンは、ベスト・アルバム『SINGLES』やボックス・セット『はっぴいえんどBOX』にも収録されています。特に「12月の雨の日」は、大滝詠一のオールタイム・ベスト『Best Always』にも収録され、その普遍的な魅力が再評価されています。

「12月の雨の日」は、アルバム・バージョンが4チャンネル録音であるのに対し、シングル・バージョンは8チャンネル録音で再録音されました。「はいからはくち」は新曲として制作され、大滝詠一のソロ・アルバム『大瀧詠一』収録曲「ウララカ」の原型とも言える楽曲です。このシングルは、はっぴいえんどにとってキングレコードからの最初のリリースとなりました。

当時、はっぴいえんどが在籍していたURCレコードは原盤制作会社でもあり、岡林信康のシングル盤をビクターから発売していました。キングレコードの担当者であった三浦光紀が、はっぴいえんどの原盤供給も受けたいと申し出たことが、このシングルの発売につながりました。しかし、グループの意向で、シングルとして発売するならばアルバムとは異なる“シングル・バージョン”を再録音することになり、制作費の問題が発生しました。最終的には、キング・スタジオが提供されることで、シングル発売が実現しました。

録音、制作

シングル・バージョンの「12月の雨の日」と「はいからはくち」は、アルバムとは別に2回レコーディングが行われています。

12月の雨の日

大滝詠一は、ジョージ・ハリスンの「マイ・スウィート・ロード」を聴いたことがきっかけで、プロデューサーのフィル・スペクターに影響を受けました。シングル・バージョンのレコーディングでは、小倉エージとともにギターの多重録音を試み、スペクター・サウンドを追求しました。小倉は、この再録音を大滝詠一の音楽的な旅立ちの始まりだったと語っています。また、この曲はラスト・ライブと再結成ライブの両方で演奏され、ライブ・アルバムにも収録されました。

はいからはくち

「はいからはくち」は、モビー・グレープの「オマハ」から影響を受けており、タイトルは“ハイカラ白痴”と“肺から吐く血”のダブル・ミーニングとなっています。シングル・バージョンは、アルバム・バージョンよりも前に録音され、大滝詠一の初期ノヴェルティ作品として位置づけられています。演奏はシャッフル版、アルバム版、「ダ・ドゥ・ロン・ロン」版の3種類に分類されます。

リリース

アナログ・シングルの復刻盤は、『ベルウッド 7インチボックス』に収録されたほか、2017年にはベルウッド・レコード設立45周年記念として限定盤でリリースされました。

アートワーク、パッケージ

歌詞カードは見開き仕様で、表面はイラストとメンバーの写真による2種類の異なるジャケットが採用されています。裏面には歌詞のほか、メンバー紹介が掲載されています。

収録曲

SIDE A: 12月の雨の日
SIDE B: はいからはくち

このシングルは、はっぴいえんどの音楽的な実験精神と、大滝詠一の後のソロ活動につながる重要な一歩を示す作品として、今もなお多くの音楽ファンに愛されています。

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