1745年ジャコバイト蜂起

1745年ジャコバイト蜂起：スコットランドの独立と王位継承をめぐる闘争

1745年、チャールズ・エドワード・ステュアート王子（通称「ボニー・プリンス・チャーリー」）率いるジャコバイト軍は、父ジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアート（旧王位継承者）のイギリス王位回復を目指し、大規模な反乱（ジャコバイト蜂起）を起こしました。この反乱は、オーストリア継承戦争でイギリス軍の大半が大陸に展開していた好機に発生し、1689年以降断続的に続いた一連の蜂起の最後を飾ることとなります。

反乱の背景：名誉革命とステュアート家への未練

1688年の名誉革命により、カトリックのジェームズ2世が廃位され、プロテスタントのウィリアム3世とメアリー2世が王位に就きました。しかし、メアリーと妹アンには後継者がなく、ジェームズ2世の弟、カトリックのジェームズ・フランシス・エドワードが王位継承の最有力候補となりました。しかし、1701年の王位継承法はカトリックを王位継承から排除したため、アン女王の死後、遠縁のプロテスタントであるハノーヴァー朝のジョージ1世が王位を継承しました。

ステュアート家支持者（ジャコバイト）は、イングランド、アイルランド、スコットランドに存在しましたが、彼らの目的と支持の根拠は多様で複雑でした。カトリックの亡命アイルランド人は、アイルランドにおける自治とカトリックの地位向上を望んでおり、ジェームズ2世が約束した土地の返還も期待していました。一方、イングランドのトーリー党員の中には、ステュアート家への支持と共に、イングランド国教会の優位を重視する者も多くいました。スコットランドでは、1707年の合同法への反発がジャコバイト運動の重要な推進力となり、多くのスコットランド人は政治的独立と経済的利益の喪失への不満を持っていました。

チャールズのスコットランド上陸と反乱の勃発

チャールズ王子はフランスの支援を得てスコットランドに上陸を試みましたが、フランス艦隊の支援は不十分で、武器や兵士を十分に確保することができませんでした。それでも、チャールズはスコットランド・ハイランド地方で反乱の狼煙を上げ、当初は少人数でしたが、多くのハイランド氏族やその他の支持者から兵を集め、エディンバラを占領、プレストンパンズの戦いで政府軍を破りました。

イングランド侵攻と撤退

その後、チャールズはイングランドに侵攻しましたが、イングランドでのジャコバイト支持は期待外れに終わり、政府軍の追撃を受ける危険も高まりました。ダービーまで到達したものの、支援の目処が立たず、スコットランドからの孤立も懸念されたため、撤退を決断します。この撤退は、チャールズとスコットランド人支持者間の不和を深める結果となりました。

カロデンの戦いそして敗北

スコットランドに戻ったチャールズは、フォルカーク・ミュアの戦いで一時勝利しますが、1746年4月、カロデンの戦いで政府軍に大敗を喫します。この敗北でジャコバイト蜂起は終結し、ステュアート家復位の夢は潰えました。チャールズはフランスに逃亡し、再起を図ろうとしましたが失敗に終わり、1788年にローマで亡くなりました。

反乱の影響と遺産

カロデンの戦いの後、政府はジャコバイトへの厳しい弾圧を行い、ハイランド地方の伝統的な氏族制度は解体へと向かいました。キルトの着用禁止など、スコットランドの文化にも大きな影響を与えました。しかし、1745年ジャコバイト蜂起は、スコットランドのアイデンティティと文化形成に大きな役割を果たしました。スコットランドの独自性を再認識させる契機となり、ゲール語文学の隆盛や、スコットランド独自の文化の再発見にもつながっていったのです。また、この蜂起は、スコットランド史研究の注目を集め、現代に至るまで様々な議論が続けられています。 ステュアート家へのロマンティックな憧憬と、スコットランドの独立への情熱が複雑に絡み合った、激動の時代を示す重要な出来事でした。

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