1762年10月30日の海戦

サンベルナルジノ海峡の海戦 (1762年)

1762年10月30日、七年戦争および英西戦争の最中、フィリピンのサンベルナルジノ海峡において、イギリス海軍とスペイン海軍の間で歴史的な海戦が繰り広げられました。ハイド・パーカー艦長率いる60門戦列艦パンサーと、リチャード・キング艦長指揮下のフリゲート艦アルゴが、スペインのマニラ・ガレオン船サンティシマ・トリニダーを拿捕したこの戦いは、当時の海洋戦力と貿易のあり方を象徴する出来事となりました。

背景

1750年にマニラで建造されたサンティシマ・トリニダーは、当時のマニラ・ガレオンの中でも最大級の規模を誇りました。その目的は、太平洋を挟んだスペイン植民地間の貿易を円滑に進めること。1762年9月3日、サンティシマ・トリニダーは貴重な財宝を積み込み、スペイン領東インドのカヴィテ港を出港し、ヌエバ・エスパーニャ副王領のアカプルコを目指しました。しかし、不運にも逆風に阻まれ、9月末までサンベルナルジノ海峡を離れることができませんでした。さらに、10月2日から3日にかけての夜には、台風に遭遇し主檣を失うという大打撃を受け、仮の帆装でカヴィテへの帰還を余儀なくされました。

この時、スペイン本国からの英西戦争開戦の報せはまだ届いておらず、サンティシマ・トリニダーが出港した直後には、イギリス東インド会社がマニラを占領するという事態が発生していました。

戦闘の経緯

サンティシマ・トリニダーがサンベルナルジノ海峡を通過中、イギリスのパンサーとアルゴがその巨大な船影を発見し、追跡を開始しました。イギリス艦隊がサンティシマ・トリニダーに追いつくと、直ちに激しい海戦が勃発。イギリス艦隊は、サンティシマ・トリニダーのマストと艤装を集中して砲撃しましたが、使用されていた木材が非常に堅牢であったため、期待されたほどの効果は得られませんでした。しかし、巧みな砲撃により、徐々にその動きを封じ込め、最終的にはマストを吹き飛ばすことに成功しました。

サンティシマ・トリニダーはその後も約2時間にわたり勇敢に抵抗を続けましたが、乗船していた船員の数が定員を大幅に超過していたこと、そして搭載していた大砲の数も必要な数の半分に満たなかったことから、スペイン側の指揮官はこれ以上の抵抗は無意味であると判断し、降伏を決意しました。この戦闘で、スペイン側の損害は戦死18名、負傷10名、捕虜750名に上り、一方、イギリス側の損害は戦死35名、負傷37名でした。

戦後

拿捕されたサンティシマ・トリニダーに積まれていた貨物には、当時の金額で150万ドルもの価値があり、船自体の価値はさらにその倍に相当すると見積もられました。サンティシマ・トリニダーは1764年にイギリスのプリマスまで曳航され、そこで解体され、木材は再利用されました。

その後の講和条約において、スペインはマニラの返還と引き換えに代償金を支払う必要がありましたが、それは実現しませんでした。サンティシマ・トリニダーの拿捕がその代わりとなりましたが、戦利品はイギリス政府のものとなり、東インド会社はその成果を享受することはできませんでした。

関連項目

七年戦争下のイギリス

参考文献

Fish, Shirley. The Manila-Acapulco Galleons: The Treasure Ships of the Pacific With an Annotated List of the Transpacific Galleons 1565-1815. AuthorHouse, 2011. ISBN 978-1-4567-7542-1
* Paine, Lincoln P. Warships of the world to 1900. Houghton Mifflin, 2001. ISBN 978-0-395-98414-7

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