1883年のメジャーリーグベースボール

1883年のメジャーリーグベースボール：変革の年

1883年、メジャーリーグベースボール（MLB）は、アメリカン・アソシエーション（AA）とナショナルリーグ（NL）の2つのリーグを中心に展開しました。この年は、リーグの勢力図や球界の構造に大きな変化が見られた年でした。

リーグの動き

NLは、前年まで所属していたトロイ・トロージャンズとウースター・ルビーレッグスを除名。代わりにニューヨーク・ゴッサムズ（後のジャイアンツ）とフィラデルフィア・クエイカーズ（後のフィリーズ）を迎え入れました。これは、リーグの勢力均衡を図るための再編策でした。

AAは、25セントという低価格な入場料で人気を博し、初年度から大きな成功を収めました。その勢いに乗じて、NLの選手を引き抜く動きを見せ、両リーグ間の競争が激化しました。

こうした状況を受け、NL会長、AA代表、そして当時マイナーリーグだったノースウエスタンリーグ（後のウェスタンリーグ、アメリカンリーグの起源）代表による三者会談が開催されました。この会談で、NLはAAを対等のメジャーリーグとして認め、3リーグ間で地域権の尊重、選手引き抜き禁止、そしてトラブル解決のための裁定委員会設置が合意されました。

しかし、この協定締結後も混乱は収まりませんでした。セントルイスの資産家ヘンリー・ルーカスがユニオン・アソシエーション（UA）を設立し、第3のメジャーリーグを宣言したのです。ルーカスは当初、NLにセントルイスのチームを設立しようとしましたが、AAのセントルイス・ブラウンズ（現カージナルス）が存在したため、NLに拒否され、新リーグ設立に動いたという背景があります。NLはこれに対抗し、AAに加盟球団を8球団から12球団に拡大するよう働きかけ、AAはワシントン、インディアナポリス、トレド、ブルックリンの4都市を新たに加えることを決定しました。

注目選手：バック・ユーイング

この年、ニューヨーク・ゴッサムズに移籍したバック・ユーイングは、10本塁打を放ちました。これは、メジャーリーグ史上初のシーズン10本塁打以上を記録した選手となりました。ユーイングはその後、プレイヤーズリーグ、NLのジャイアンツ、クリーブランド・スパイダース、シンシナティ・レッズで活躍し、19世紀を代表する捕手として知られています。生涯打率.303（.311とする資料もあり）、強肩を誇り、「19世紀最大の捕手」と称えられ、1939年に野球殿堂入りを果たしました。

規則の改正

1883年には、投球に関する規則も改正されました。これまで制限されていた下手投げが解禁され、投手は肩までの高さであれば、どこからでも投球できるようになったのです。

各リーグの最終成績

アメリカン・アソシエーション：フィラデルフィア・アスレチックスが優勝
ナショナルリーグ：ボストン・ビーンイーターズが優勝

1883年は、MLBの歴史において、リーグ間の競争、新リーグの設立、スター選手の誕生、規則改正など、様々な出来事が重なり、大きな変革期を迎えた年として記憶されています。

参考資料
鈴木武樹 著 『アメリカ・プロ野球史』三一書房
週刊ベースボール 『米大リーグ 輝ける1世紀 ～その歴史とスター選手～』ベースボールマガジン社
池井優 著 『大リーグへの招待』平凡社
ナショナルリーグ順位表
* アメリカン・アソシエーション順位表

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