1924年5月ドイツ国会選挙

1924年ドイツ国会選挙：ドーズ案と極端主義勢力の台頭

1924年5月4日に行われたドイツ国会選挙は、第一次世界大戦後のドイツにおいて、政治的転換点となる重要な選挙でした。この選挙は、当時少数与党だったマルクス内閣が野党の反対を封じるために実施したものでしたが、選挙戦中に提示されたドーズ案が、選挙の主たる争点となりました。

選挙に至るまでの経緯

1923年のフランス軍によるルール占領に対するドイツ政府の受動的抵抗は、深刻なハイパーインフレを引き起こし、経済危機を招きました。この危機を収拾するため、グスタフ・シュトレーゼマン首相率いる大連立政権が成立しましたが、社民党の離脱や野党からの不信任案可決により崩壊しました。

その後、ヴィルヘルム・マルクス首相率いる新たな内閣が成立しましたが、議会における支持基盤が弱く、緊急事態への対応として全権委任法を制定しました。しかし、この法案をめぐる野党との対立が深まり、マルクス内閣は国会解散を決断したのです。

ドーズ案と選挙戦

選挙戦のさなかに、ドイツの賠償問題に関するドーズ案が提示されました。この案は、ドイツ政府が受諾する方針を示したものの、右翼野党はこれを激しく批判し、左翼野党は容認という立場をとりました。一方、当時禁止されていたナチ党は、偽装政党である国家社会主義自由党を結成し、選挙戦に臨みました。共産党も選挙に参加し、いずれもドーズ案に反対の立場を示しました。

選挙結果と政局

選挙の結果は、ドーズ案に反対した極右・極左勢力の躍進となりました。国家人民党は議席を大幅に増やし第一党に躍進、共産党も議席を大きく伸ばしました。ナチ党の偽装政党である国家社会主義自由党も、予想外の議席を獲得しました。一方、ドーズ案に賛成した与党や社民党は、いずれも議席を減らす結果となりました。

選挙勝利した国家人民党はマルクス内閣の退陣を要求し、内閣は総辞職しました。しかし、その後もほぼ同じ顔ぶれによる新たな内閣が成立しました。この内閣は、国家人民党との連携を試みましたが、失敗し、結局再び国会が解散され、翌年新たな選挙が行われることになりました。

各党の動向と主要人物

この選挙では、比例代表制が採用され、20歳以上の男女に選挙権が与えられました。投票率は前回選挙より減少しました。選挙後には、エルンスト・テールマン（共産党）、オットー・フォン・ビスマルク（国家人民党）、アルフレート・フォン・ティルピッツ（国家人民党）、ルドルフ・ヒルファーディング（社民党）、ゴットフリート・フェーダー（国家社会主義自由党）、ヴィルヘルム・フリック（国家社会主義自由党）、エーリヒ・ルーデンドルフ（国家社会主義自由党）、エルンスト・レーム（国家社会主義自由党）など、後に歴史に名を残す多くの政治家が初当選しました。

参考文献

エーリッヒ・アイク 著、救仁郷繁 訳『ワイマル共和国史 II 1922~1926』ぺりかん社、1984年
阿部良男『ヒトラー全記録 ：20645日の軌跡』柏書房、2001年
林健太郎『ワイマル共和国 —ヒトラーを出現させたもの—』中央公論新社〈中公新書27〉、1963年
平島健司『ワイマール共和国の崩壊』東京大学出版会、1991年

この選挙は、ワイマル共和国の不安定性を象徴する出来事であり、その後ナチスの台頭を加速させる重要な要因の一つとなりました。ドーズ案をめぐる政治的対立と、極端主義勢力の勃興は、ドイツの未来を大きく左右する転換期であったと言えるでしょう。

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