1927年の日本公開映画

1927年（昭和2年）は、日本の映画界にとって、国内外の多様な作品が紹介され、活気に満ちた一年でした。この時期はサイレント映画の全盛期にあたり、映像表現が追求され、日本映画も外国映画も数々の印象的な作品を生み出しました。東京や大阪の主要な映画館を中心に、年間を通じて多くの新作が封切られました。

この年に日本で公開された作品は、日本国内で製作されたものに加え、アメリカ、フランス、ドイツ、オーストリア、イギリス、スウェーデンといった様々な国の作品が含まれており、その国際性の豊かさが特徴です。特にアメリカ映画の公開本数が圧倒的に多く、当時の日本の観客が世界各国の映像文化に触れる機会が豊富だったことが伺えます。

日本映画では、時代劇が重要な位置を占めていました。特に阪東妻三郎プロダクション、日活、マキノ・プロダクションといった主要な映画会社から、多くの時代劇シリーズや単発作品が公開されました。「忠次旅日記」は、この年のキネマ旬報ベストテンで日本映画の第1位に輝く傑作として評価されました。また、「砂絵呪縛」「鳴門秘帖」「照る日くもる日」といった作品は、複数のパートに分かれた連作として、あるいは複数の映画会社によって競作される形で公開されており、当時の日本映画における企画や製作の多様性を示しています。これらのシリーズは、観客の継続的な関心を引きつける形式として盛んに作られました。

時代劇以外にも、日本映画は様々なジャンルの作品を公開しました。「彼をめぐる五人の女」はキネマ旬報ベストテンで2位に入り、現代劇における人間ドラマの質の高さを示しました。他にも文芸作品である「父帰る」「椿姫」「真珠夫人」「人形の家」や、「海の勇者」のような冒険活劇、「からくり娘」のような庶民的な物語、そして社会派的な視点を持つとされる「下郎」などが公開されています。これらの作品は、当時の日本映画が多角的なテーマに取り組んでいたことを物語っています。

外国映画に目を向けると、その質の高さが際立っています。キネマ旬報ベストテンの外国映画部門には、後世に名を残す名作が多数選出されています。栄えある第1位はアメリカ映画「第七天国」でした。ドイツ表現主義の傑作とされる「ヴァリエテ」が2位、第一次世界大戦を描いたスペクタクル大作「ビッグ・パレード」（アメリカ）が3位に続いています。他にも、ゲイリー・クーパー主演の冒険活劇「ボー・ジェスト」（アメリカ）が4位、サイレント期のアメリカ映画を代表する巨匠の一人、ルビッチ監督の「肉体の道」（アメリカ）が5位にランクインしました。さらに、ドキュメンタリー「チャング」（アメリカ）や、当時のハリウッドを代表する俳優ルドルフ・ヴァレンティノの遺作となった「帝国ホテル」（アメリカ）、グレタ・ガルボ主演の「椿姫」（アメリカ）、オペラを映画化した「カルメン」（フランス）、ジョン・バリモア主演の「ドン・ファン」（アメリカ）などがベストテン入りを果たしており、当時の日本の観客が世界の最先端の映画文化に触れていたことがわかります。

これらの作品は、月ごとに様々なラインナップで公開されました。1月には「三悪人」「女王蜂」（アメリカ）や「大帝の密使」（フランス）といった外国映画が、日本映画では「幡随院長兵衛」などが封切られました。3月にはベストテン入りの「ボー・ジェスト」や「女優ナナ」（フランス）が公開され、4月、5月にかけても多数の外国映画が登場しました。秋以降はベストテン上位の作品が多く公開される傾向が見られます。このように、1927年は年間を通じて国内外の質の高い作品がバランス良く公開され、日本の映画興行が成熟しつつあった時期と言えるでしょう。

この年の日本公開映画を詳細に知るためには、当時の映画雑誌や専門書、オンラインデータベースなどが貴重な情報源となります。これらの資料を参照することで、個々の作品の背景や評価についてさらに深く理解することができます。1927年は、サイレント映画の芸術が頂点に達し、後の映画史に大きな影響を与える作品が多く生まれた、記憶すべき年であったと言えるでしょう。

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