1927年6月29日の日食

1927年6月29日、地球上で一つの大きな天文現象、日食が発生しました。この日食は、皆既日食が観測できた狭い帯域と、部分日食が見られた広大な範囲に分かれて影響を及ぼしました。

皆既日食の神秘的な光景をその目で捉えることができたのは、太陽、月、地球が一直線に並んだ時にできる影の本影が地上を通過した地域です。具体的には、イギリス、ノルウェー南部および北東部、スウェーデン北部、フィンランド北部のラッピ州（現在のラッピ県北部にあたる地域）、そして広大なソビエト連邦の北部地方が含まれます。さらに、太平洋を跨いだ北アメリカ大陸側では、現在アメリカ合衆国アラスカ州の一部となっているアムクタ島でも皆既日食が観測されましたが、日付変更線を通過するため、現地時間では前日の6月28日となりました。

皆既日食の経路から外れた地域でも、多くの場所で月が太陽の一部を隠す部分日食が見られました。その範囲は極めて広範にわたり、ヨーロッパ全域、アフリカ大陸の北部地域、アジアではその北半分、具体的には西アジアの北部、中国の北半分、朝鮮半島、そして日本列島の一部（南西諸島の奄美群島とその南の地域、および南洋諸島を除く）が含まれました。また、北米大陸ではデンマーク領グリーンランド、カナダ北部、そしてアラスカ準州の大部分（南東部を除く）で部分日食が観測されました。これらの多くの地域では、日食は6月29日に見られましたが、北アメリカ北西部では6月28日に観測され、カナダ北部の一部の白夜地帯では、深夜0時を挟んで6月28日から29日にかけて部分日食が継続して見られるという珍しい現象も起こりました。

特にイギリス国内では、この日食に対する関心が高く、各地で観測の試みが行われました。ノース・ヨークシャー州クレーヴェンにあるジグルスウィックには、皆既日食を一目見ようと多数の人々が集まりました。幸いにも現地は晴天に恵まれ、観測は成功裏に終わりました。しかし、イギリスの他の多くの地域では、観測には不利な天候に悩まされました。多くの学生を含む人々が観測活動に参加したものの、悪天候のため皆既日食を捉えることができませんでした。特にウェールズ北部では、スノードン山周辺のランベリス、カーナーヴォン、ランラッグ、デイニオレン、プルヘリ、クリキエス、ランディドノー、ポースマドッグ、コンウィ、バンガー、ペンマインマウルといった多数の場所で雨の影響を受け、期待された観測は実現しませんでした。

このように、1927年6月29日の日食は、広大な地域に影響を与え、皆既日食の神秘を見ることができた地域と、悪天候に阻まれた地域とで、観測結果が大きく分かれることとなりました。天候という自然条件が、貴重な天体イベントの観測成功にとってどれほど重要であるかを改めて示す出来事であったと言えるでしょう。

もう一度検索