1928年の日本公開映画

1928年（昭和3年）には、多数の国内外の映画作品が日本の劇場で商業公開されました。この年に公開された作品リストは、当時の日本の映画文化や海外との交流状況を知る上で貴重な資料となります。公開された作品の多くは無声映画であり、トーキー映画が登場する過渡期に当たります。

公開作品の傾向

この1年間に日本で公開された映画は、製作国もジャンルも非常に多様でした。圧倒的に多かったのはアメリカ映画で、コメディ、ドラマ、アクションなど幅広い作品が紹介されています。アメリカ以外では、ドイツ映画が比較的多く、表現主義的な作品や社会派作品などが上映されました。イギリスやフランスといったヨーロッパ各国の作品も公開されています。

日本映画も多数製作・公開されており、時代劇や現代劇、文芸作品など、様々なテーマの映画が観客に届けられました。特にマキノ・プロダクションや日活、東亜キネマといった当時の主要な映画会社から多くの作品が発表されています。

1928年のキネマ旬報ベストテン

この年に公開された作品の中で、特に高い評価を得たのは「キネマ旬報ベストテン」に選出された作品群です。日本映画と外国映画に分けて選ばれており、当時の批評家や観客がどのような作品に注目していたかを知る手がかりとなります。

日本映画ベストテン

1928年の日本映画ベストテンには以下の作品が選ばれました。

1. 浪人街第一話
2. 陸の王者
3. 新版大岡政談第三篇解決篇
4. 崇禅寺馬場
5. 彼と東京
6. 村の花嫁
7. 蹴合鶏
8. 結婚二重奏
9. 平手造酒
10. 十字路

マキノ・プロダクション製作の『浪人街第一話』が第1位に輝き、続く『陸の王者』『新版大岡政談第三篇解決篇』なども高い評価を受けています。時代劇が多くランクインしている点が特徴的です。

外国映画ベストテン

外国映画ベストテンには、主にアメリカやドイツの作品が選ばれました。

1. サンライズ（アメリカ）
2. - （該当なし）
3. サーカス（アメリカ）
4. ベン・ハー（アメリカ）
5. つばさ（アメリカ）
6. 街の天使（アメリカ）
7. - （該当なし）
8. - （該当なし）
9. 結婚行進曲（アメリカ）
10. ムーラン・ルージュ（イギリス）

F・W・ムルナウ監督の傑作『サンライズ』が第1位を獲得。チャップリン主演の『サーカス』や、壮大なスペクタクル作品『ベン・ハー』など、現在でもよく知られる名作が多く公開され、高い人気を博していたことがわかります。

その他の主な公開作品

ベストテン入りはしなかったものの、1928年には数多くの注目すべき作品が公開されています。アメリカ映画では、『暗黒街』『ラ・ボエーム』『カルメン』『デパート娘大学』『キートンの船長』など、多様なジャンルの作品が毎月のように紹介されました。

ドイツ映画では、『プラーグの大学生』『ファウスト』『聖山』『伯林 - 大都会交響楽』『喜びなき街』といった、後の映画史にも名を残す重要な作品が公開されています。フランスからは『メニルモンタン』、イギリスからはベストテン入りの『ムーラン・ルージュ』などが上映されました。

日本映画では、『江戸三国志』シリーズ、『新版大岡政談』シリーズのように、複数の製作会社から同名の企画が発表されることもありました。また、『忠魂義烈実録忠臣蔵』のような歴史劇や、『四谷怪談』のような怪談もの、『鞍馬天狗』のような人気シリーズなど、様々な作品が製作されています。

この年の映画界に見るもの

1928年の公開リストからは、当時の日本の映画市場が国内外の作品に開かれており、特にアメリカ映画が大きな影響力を持っていたことが読み取れます。同時に、日本国内でも活発な映画製作が行われ、多様な題材やジャンルの作品が生み出されていました。キネマ旬報ベストテンの結果は、当時の観客や批評家が国内外の優れた作品を見分け、評価していたことを示しています。まだサイレント映画が主流の時代でしたが、この活況が後の日本映画の発展の礎となったと言えるでしょう。

1928年の映画公開状況は、日本の映画史における重要な一断面を示しています。

もう一度検索