1928年アムステルダムオリンピックの陸上競技・男子三段跳

1928年アムステルダムオリンピック 男子三段跳の歴史的瞬間

1928年のアムステルダムオリンピックは、陸上競技において特に注目を集めた年となりました。特に男子三段跳では、日本の織田幹雄が金メダルを獲得し、彼は日本人初のオリンピック金メダリストとなりました。この勝利は、日本の陸上競技の躍進を象徴する重要な出来事でした。

開催前の状況

1924年のパリオリンピックで、オーストラリアのニック・ウィンターが15m525という世界新記録を出して優勝しました。そのため、アムステルダムオリンピックでも彼が期待されていましたが、練習中に負った膝の怪我が影響し、優勝の見込みは薄いと語っていました。ウィンターは「日本の織田幹雄かフィンランドのビルホ・ツーロスが強力な対抗馬」と名指しし、織田にとっては大きな期待が寄せられていました。

織田は、1927年に記録を更新し、1928年のオリンピック予選でも好調な成績を収めたことで、国内では「もしかしたら」という期待を膨らませる状況が生まれました。

他の有力選手としては、フィンランドのエリッキ・ヤルヴィネンとアメリカのリーヴァイ・ケーシーが挙げられ、日本の南部忠平も決勝進出が見込まれていましたが、彼はスランプに悩んでいました。

競技前の緊張感

この男子三段跳の決勝は、陸上競技の開幕から5日目に行われましたが、当日は日本の陸上競技選手たちにとって特別な意味を持つ日であり、堅実なプレーが求められました。競技前日にも雨が降り、助走路の状態が選手たちにとっては課題となりました。

当時の日本では「三段跳」という言葉はまだ一般的ではなく、英語の幽霊が残る「ホップステップアンドジャンプ」という長い名称が使われていました。競技名は後に「三段跳」に改められ、選手たちだけでなく、観客もその名に親しむようになっていました。

予選と決勝

予選は2組に分かれて行われ、上位6名が決勝に進出しました。織田は初めてオリンピックで15m超えを達成し、トップ通過を果たしました。一方、南部も見事に予選を突破し、日本の選手たちの活躍が期待される中、決勝が行われました。

決勝では、女子800m決勝での人見絹枝の健闘があったこともあり、織田と南部はお互いを励まし合い、緊張感の高まる中で挑みました。決勝は予選を上回る記録が求められる中、織田も南部も全力を尽くしましたが、初回の試技ではファールが続きました。織田は3回の試技で記録を更新できず、終盤まで緊張の瞬間が続きました。彼の跳躍が優れた技術を示していたため、他の選手が記録を上回らなければ金メダルが決定する状況が訪れました。

フィンランド勢が臨んだ最後の試技でも、織田の記録を超えることはできず、結果として織田が金メダルを獲得しました。その瞬間は、感動の瞬間であり、多くの人々に祝福され、報道陣に囲まれての写真撮影が行われる光景が広がりました。

賞賛とその後

表彰式は選手の前で国歌と国旗の掲揚が行われるスタイルであり、織田は国旗の掲揚と君が代の演奏に深い感慨を抱きました。彼は最初、優勝の実感が薄かったものの、宿舎に戻ると日本選手団からの祝福を受けて、勝利を実感することができました。

織田はその後、1932年のロサンゼルスオリンピックにも出場しましたが、膝の怪我が影響し、期待された活躍が叶わなかった一方で、南部は翌年のオリンピックで素晴らしい成績を収め、日本の三段跳はその後も続く名誉ある伝統となりました。しかし、戦後、メダルの獲得者は現れず、織田は「日本の三段跳も地に墜ちた」と嘆くことになります。こうして1928年のオリンピックは、日本陸上競技界の歴史における重要な分岐点となったのです。

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