1933年度の将棋界

1933年度 将棋界の動向

1933年度（昭和8年4月～昭和9年3月）の将棋界は、いくつかの重要な出来事が発生し、大きな変化の兆しが見られた時代でした。特に、関西を拠点に活躍していた棋士たちの動向が、その後の将棋界の情勢に大きな影響を与えました。

まず注目すべきは、9月5日に発生した坂田三吉の大阪朝日新聞社退社です。当時、関西の棋界をリードし「名人」の称号をほしいままにしていた坂田三吉の退社は、大きな衝撃を与えました。その理由は諸説ありますが、新聞社との間に何らかの摩擦が生じたものと考えられています。この退社は、関西将棋界の勢力図を大きく塗り替え、新たな時代の幕開けを予感させる出来事でした。

坂田三吉の退社を受け、大阪朝日新聞社は10月11日、新たな棋士団体「十一日会」を発足させました。盟主には神田辰之助七段が就任しました。十一日会は、新聞社をバックに、新たな将棋界の秩序を築こうとする動きとして注目されました。この団体設立は、坂田三吉の退社という出来事への直接的な対応とも考えられますが、将棋界における新聞社の影響力の拡大を示す出来事でもありました。

1934年1月1日には、東西対抗ラジオ将棋という新たな試みが実施されました。この対局は、当時最強棋士の一人であった木村義雄八段と、十一日会の盟主である神田辰之助七段による、平手と香落ちの二番勝負でした。結果は、木村八段が平手で敗れ、香落ちで勝利するという接戦となりました。ラジオを通じて将棋の対局が全国に放送されたことは、将棋の普及に大きく貢献したと考えられます。この対局は、東西の棋士の実力差や、新たなメディアの活用といった点で、将棋界に新たな視点をもたらしました。

これらの出来事を総合的に見ると、1933年度の将棋界は、関西将棋界の変革期であったと言えるでしょう。坂田三吉の退社、十一日会発足、東西対抗ラジオ将棋と、いくつかの出来事が連鎖的に発生し、それらは将棋界全体の構造や勢力図に大きな変化をもたらしました。この時代の出来事は、現代の将棋界を考える上でも重要な歴史的背景となっています。

この時代の記録は、加藤治郎、原田泰夫、田辺忠幸共著『［証言］将棋昭和史』（毎日コミュニケーションズ、1999年9月）や、日本将棋連盟『将棋年鑑 昭和43年版』（1968年）といった資料によって裏付けられています。これらの資料は、当時の将棋界の実情を詳細に伝える貴重な情報源となっています。今後の研究においても、これらの資料を参照することで、より深い理解が得られるでしょう。

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