1933年3月ドイツ国会選挙

1933年3月5日ドイツ国会選挙：ナチスの独裁への道

1933年3月5日に行われたドイツ国会選挙は、アドルフ・ヒトラー率いるナチス党（国民社会主義ドイツ労働者党）が政権を掌握してから初めて実施された選挙でした。この選挙は、ヒトラーによる独裁体制確立への重要な転換点となりました。

選挙に至る経緯

1933年1月30日、ヒトラーはヒンデンブルク大統領から首相に任命されました。しかし、当初のヒトラー内閣はナチ党員が少数で、閣僚の多くは保守派で構成されていました。ヒトラーは傀儡として扱われかねない状況にありました。

ナチ党は国会第一党でしたが、連立相手である国家人民党と合しても過半数を確保していませんでした。そのため、国会からの不信任案提出の危険性がありました。この状況を打破するため、ヒトラーは総選挙の実施を模索しました。

当初、ヒンデンブルク大統領は中央党との連立を希望していましたが、交渉は失敗に終わります。ヒトラーは総選挙を強く主張しましたが、国家人民党はナチ党の躍進による自党の影響力低下を懸念し、共産党の禁止と議席剥奪を主張しました。最終的に、ヒトラーの意向で総選挙が行われることとなりました。2月1日、ヒンデンブルク大統領は国会を解散しました。

各党の選挙戦

ナチス党:

ナチス党の選挙戦はゲッベルスの指揮の下、国家機関や国庫を動員した大規模なものとなりました。ラジオ、新聞、ポスター、集会、遊説隊などあらゆる手段を用いて宣伝を行い、「ボルシェヴィズムと闘え」「国民にパンと職を」のスローガンを掲げました。特にラジオは、ゲッベルスの努力によりヒトラー演説の効果的な編集を行い、強力な宣伝ツールとなりました。さらに、野党の活動を制限する大統領令を発令するなど、選挙戦を有利に進めるための手段を講じました。資金面でも、ゲーリングが経済界の大物から多額の献金を集めました。国会議事堂放火事件後には、共産党や社民党への弾圧を強化しました。

社民党:

社民党は「投票用紙でファシズムと闘う」と訴え、独自の選挙戦を展開しましたが、ナチス党による集会妨害や弾圧に苦しめられました。ナチス党の集会を妨害することを検討しましたが、党本部はそれを禁止しました。また、ナチス党を「反動」勢力の操り人形と見ており、選挙戦では反動勢力への攻撃に集中しました。

共産党:

共産党はナチス党からの弾圧が最も激しく、まともな選挙活動ができませんでした。警察の捜査を受け、多くの党員が逮捕されました。社民党との統一戦線を模索しましたが、社民党からは拒絶されました。

中央党:

中央党は、ナチス党と連携して選挙戦を展開しました。

黒白赤(国家人民党と鉄兜団):

国家人民党と鉄兜団は、「黒白赤」という保守共闘戦線を結成し、ナチス党の社会主義的傾向への警告を発しました。しかし、有権者の支持を得るには至りませんでした。

選挙結果とその後

選挙の結果、ナチス党は43.9%の得票率で288議席を獲得しました。単独過半数には届きませんでしたが、国家人民党と合わせると過半数を獲得しました。高い投票率（88.8%）を記録し、ナチス党への新規支持者の獲得も目立ちました。

3月9日、共産党が非合法化され、議席が剥奪されると、ナチス党は単独過半数を獲得しました。3月21日、ポツダムで壮麗な国会開会式が行われ、3月24日には全権委任法が可決され、ヒトラーの独裁体制が確立されました。その後、ナチス党以外の全政党が解散させられ、独裁体制はさらに強化されていきました。

この選挙は、ナチス党による巧妙なプロパガンダと弾圧、そして民主主義体制の脆弱さを浮き彫りにした結果、ヒトラーによる独裁体制への道を決定的に開くものとなりました。 著名な政治家も多くこの選挙で当選を果たしています。選挙制度は比例代表制で、選挙権は20歳以上の男女に与えられていました。

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