1934年の日本競馬

1934年（昭和9年）の日本競馬

1934年（昭和9年）の日本競馬界は、制度改革の動き、インフラの拡充、そして自然災害といった様々な出来事が交錯した一年でした。この年は、公認競馬と地方競馬の関係性、産馬改良に繋がる競走体系への議論が深まるなど、競馬の将来に向けた重要な話し合いが進められました。

制度と運営の変革

年の初めには、福島と新潟の両競馬倶楽部が連携を強化する動きが見られました。両倶楽部はサラブレッドの新馬30頭を共同で購入し、それぞれの競馬場で開催される新馬戦に出走させる協定を結びました。これにより、新馬の供給と競走機会の確保における協力体制が構築されました。

速歩競走の位置づけについても議論が深まりました。1月には帝国競馬協会が、問題が発生しやすい速歩競走を減らす目的で、中間種による障碍競走の実施を主務省に申請しました。しかし、主務省は実用的な中間種の育成という観点からこの提案を認めませんでした。また、5月には中山競馬倶楽部の岡田小七氏が、繋駕速歩競走に関する研究報告書をまとめました。この報告書では、駈歩競走や障碍競走が国防および産業上の産馬改良に大きな効果を持つ一方で、速歩競走はこれらとの関連性が薄いという結論が示されており、速歩競走の役割に対する疑問が投げかけられました。

公認競馬と地方競馬の関係性についても新たな取り決めが導入されました。4月、農林省畜産局は、地方競馬に出走経験のある馬や騎手に対する公認競馬への出走・騎乗制限に関する帝国競馬協会の申請を承認しました。これにより、翌1935年1月1日以降、一度公認競馬に出走した馬が地方競馬に登録された場合や、公認競馬で騎乗許可を得た騎手が地方競馬で騎乗した場合、その後の公認競馬での出走登録や騎乗が許可されなくなるなど、両者の区別がより明確になりました。

施設とインフラの整備、そして災害

競馬場へのアクセスが改善された出来事として、4月には下河原線が電化され、中央線国分寺駅から東京競馬場前駅までの試運転が実施されました。この電化により、4月15日から東京競馬開催に合わせて列車の運行が開始され、観客や関係者の利便性が向上しました。

将来的な競馬の発展を見据えた重要な決定もありました。7月の帝国競馬協会臨時総会では、東京世田谷区用賀町に馬の競技場を建設するための用地、約5万坪の買収が決議されました。この土地は、後に馬事公苑として日本の馬術や競馬の振興に貢献することになります。

競馬開催を支える輸送も行われました。8月には、東京競馬倶楽部が新潟競馬倶楽部の秋季開催のために、競走馬56頭を臨時列車で東京競馬場から新潟へ輸送しました。

一方で、自然災害による被害も発生しました。9月21日に襲来した室戸台風は関西地方に甚大な被害をもたらし、京都競馬場と阪神競馬場も被災しました。

主要競走と新たな歴史

この年、日本の競馬史において特筆すべき出来事がいくつかありました。

4月22日には、第3回東京優駿大競走が東京競馬場で開催されました。このレースでは、優勝したフレーモアに騎乗した大久保亀治騎手が、新たに設けられた騎手賞（銀杯）の最初の受賞者となりました。これは、競走馬だけでなく騎手の功績を称える新しい試みでした。

また、12月5日には中山競馬場で第1回大障碍競走が行われ、日本の障害レースの歴史に新たな一ページが加わりました。この記念すべき第1回の優勝馬はキンテン、優勝騎手は稲葉幸夫氏でした。

この他にも、年間を通じて各地で主要な競走が開催されました。1月14日には阪神競馬場で農林省賞典競走（春）が行われスターカツプが、4月3日には京都競馬場で牝馬連合競走（春）が行われエツフオードが勝利を収めました。4月27日の東京競馬場での農林省賞典競走（春）はワカミチが制し、秋には11月23日に東京競馬場でデンコウが、12月24日には阪神競馬場でスパーションがそれぞれの農林省賞典競走に勝利しました。秋の牝馬連合競走は12月2日に京都競馬場で行われ、ゼンジが優勝しました。

その他の動き

競馬界全体に関連する動きとして、帝国馬匹協会が東京帝国大学農学部に40万円を寄付しました。この寄付は翌年以降も数年間継続され、馬に関する研究や教育の支援に充てられました。

この年には、将来の競馬界を担う競走馬や人物も誕生しました。競走馬ではハツピーマイト（2月26日）、方景（3月8日）、ヒサトモ（4月23日）、コクオーなどが生まれました。人物では、9月7日に坪正直氏、12月9日に松永善晴氏が誕生しています。

1934年は、制度の調整やインフラ整備によって競馬の近代化が進む一方で、産馬改良や競走体系に関する議論が深まり、また自然災害による困難にも直面するなど、日本競馬が様々な課題と向き合いながら前進した一年でした。

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