1939年の日本公開映画

1939年に日本で公開された映画

1939年（昭和14年）は、日本国内において数多くの映画作品が商業公開された活況を呈した一年でした。この期間、スクリーンには日本の映画会社が製作した多彩な作品群と、海外、特にアメリカを中心とした様々な国の映画が輸入され、観客に多様な物語と映像体験を提供しました。年間を通じてコンスタントに新作が公開され、人々にとって映画鑑賞が重要な娯楽の一つであったことがうかがえます。

多様な国産映画の展開

日本の映画界からは、多岐にわたるジャンルの作品が生まれました。その年の映画評論で特に高く評価され、キネマ旬報ベストテンの日本映画部門で第1位に選ばれたのは、山本嘉次郎監督の社会派作品「土」でした。続く第2位には、溝口健二監督による芸術的な時代劇「残菊物語」、第3位には戦時下での兵士を描いた「土と兵隊」がランクインしています。その他にも、「兄とその妹」（4位）、「上海陸戦隊」（5位）、「子供の四季 春夏の巻」「子供の四季 秋冬の巻」（共に6位）、「暖流」（7位）、「爆音」（8位）、「花ある雑草」（9位）、「海援隊」（10位）といった作品が評価リストに名を連ねました。

これらのベストテン作品以外にも、「評判五人娘」や「むかしの歌」といった文芸色の強い作品、さらには「愛染かつら」の続編と完結篇が公開されるなど、人気シリーズの展開も見られました。時代劇では「阿波狸合戦」「忠臣蔵」「春秋一刀流」「清水港」「越後獅子祭」「狸御殿」「長脇差団十郎」「雪之丞変化 闇太郎懺悔」などが公開され、現代劇や社会派ドラマ、喜劇まで、当時の日本の社会や文化を反映した様々な作品が製作されています。

国際色豊かな外国映画の流入

外国映画もまた、日本のスクリーンを彩る上で欠かせない存在でした。圧倒的に多かったのはアメリカ映画で、「ハイジ」「グレート・ワルツ」「汚れた顔の天使」など、今日でも語り継がれる名作や話題作が多数公開されました。これらの作品は、当時の日本の観客にハリウッドの豪華絢爛な世界や先進的な技術、そして異国の風俗や文化を伝えました。

外国映画の評価を示すキネマ旬報ベストテンでは、フランス映画の傑作「望郷」が堂々の第1位に輝きました。同国からは「格子なき牢獄」（2位）、「美しき青春」（8位）、「とらんぷ譚」（9位）も上位にランクインしており、当時の日本においてフランス映画が高い芸術性で評価されていたことがわかります。その他、オーストリアの「ブルグ劇場」（3位）、「人生の馬鹿」（10位）、アメリカの「我が家の楽園」（4位）、「デッドエンド」（5位）、「素晴らしき休日」（6位）、ドイツの「早春」（7位）などもベストテン入りを果たしています。

アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、オーストリアなど、多岐にわたる国の作品が公開され、国際色豊かなラインナップが日本の観客に提供されました。「ボッカチオ」（ドイツ）、「茶碗の中の嵐」（イギリス）、「ナポリのそよ風」（イタリア）、「ブルグ劇場」（オーストリア）など、様々な文化圏の映画が上映されたことは、当時の日本の映画文化の豊かさを示すものでしょう。

年間公開の様子

作品の公開は年間を通じてバランス良く行われました。例えば1月には「スイングの女王」（アメリカ）、「ハイジ」（アメリカ）といった話題作が、2月にはキネマ旬報外国映画ベストテン上位の「素晴らしき休日」（アメリカ）、「望郷」（フランス）などが公開されました。春の4月には日本映画の「土」や「兄とその妹」といったベストテン入り作品が登場。夏にかけても国内外の新作が続々と公開され、年末の12月には日本映画ベストテンの「暖流」や外国映画ベストテン上位の「格子なき牢獄」（フランス）が公開されるなど、一年を通じて話題作が提供され続けました。

まとめ

1939年の日本の映画公開は、国産映画が活発に製作される一方で、アメリカ映画を中心とした外国映画も多数輸入され、観客が国内外の多様な作品に触れる機会に恵まれた年でした。キネマ旬報ベストテンに選ばれた作品群を見ても、当時の映画界が高い水準にあり、観客の幅広い興味に応える作品が豊富に存在したことがうかがえます。この年のスクリーンは、昭和初期の日本の文化と、世界各国の映像文化が交錯する場となっていたのです。

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