1942・愛の物語

概要

1994年にインドで製作されたヒンディー語の恋愛映画。ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーがメガホンを取り、アニル・カプールとマニーシャ・コイララが主役を演じた。物語の舞台は、イギリスによる植民地支配が終わりを告げようとしていた1942年のインド。独立を目指す運動と植民地政府への忠誠という二極化が進む社会の中で、対立する立場の家庭に生まれた若者たちの純粋な愛と、それに翻弄される過酷な運命が描かれている。特に、インド映画音楽界の巨匠R・D・ブルマンが手掛けた情感豊かな楽曲（彼の遺作となった）は高く評価されており、その他にもキャスト陣の演技、優れたカメラワークなどが批評家から絶賛され、商業的にも成功を収めた。カンナダ語映画『Mysore Mallige』から強い影響を受けている点が指摘されている。

ストーリー

1942年、イギリス領インド帝国はかつての勢いを失い、独立運動の機運が高まっていた。インド社会が独立派と植民地政府支持派に分裂する中、植民地政府高官の息子ナレーンは、独立運動家の娘ラッジョーと出会い、激しい恋に落ちる。ナレーンの父ハリ・シンは、冷酷なダグラス将軍の指揮下で独立運動家を弾圧する立場にあり、一方ラッジョーの父ラグヴィールは、息子を殺された恨みを晴らすため独立運動に身を投じていた。ナレーンはラグヴィールの元を訪れ、ラッジョーとの結婚を申し出るが拒絶される。しかし、ラッジョーへの揺るぎない愛と覚悟を伝えたことで、ラグヴィールはその想いを認め、まずはハリ・シンに話を通すよう告げる。息子から話を聞いたハリ・シンは表向きは祝福するが、内心は独立運動家の娘との結婚に激怒し、結婚話を装ってラグヴィールの居場所を聞き出すと、ビシュト少佐を通じて植民地政府に密告する。インド帝国警察の急襲を受けたラグヴィールは、警官たちを道連れに爆死を遂げる。外出中に父の死を知ったラッジョーは逃亡し、父の同志シュバンカルに保護され、父の遺志を継いで独立運動の戦士となることを決意する。一方、父の裏切りによってラグヴィールが死んだことを知ったナレーンは、ハリ・シンとの関係を断ち切り、独立運動に参加する道を歩み始める。時を同じくして、ビシュト少佐の娘チャンダも、父が独立運動指導者アビド・アリ・バイグを殺害する場面を目撃し、父の後悔を知ったことで独立運動に加わる。
ナレーンは街中でダグラス将軍の暗殺を試みるが、失敗し逮捕され、絞首刑を宣告されてしまう。ダグラス将軍は、処刑を見守るために集まった市民への発砲を命じ、多くの犠牲者が出る中、チャンダも命を落とす。絶体絶命のナレーンを救ったのはシュバンカルだった。そして、娘を殺されたビシュト少佐もまた、ナレーンとシュバンカルに加勢し、裏切り者のハリ・シンを討ち、ダグラス将軍に深手を負わせる。混乱が収束した後、ナレーンはラッジョーとの再会を果たし、和解する。ダグラス将軍はシュバンカルの手によって処刑される。物語の終盤、ナレーン、ラッジョー、シュバンカル、ビシュト少佐、そして市民たちが一堂に会し、高々とインド国旗を掲げ、独立への希望を胸に敬礼を捧げる。

製作

本作の製作は、脚本家カンナ・チャンドラの娘たちが、監督ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーの作品に感銘を受け、母親に脚本執筆を依頼したことから始まる。当初、現代を舞台にしたラブストーリーとして構想されたが、チョープラー監督の意向により、カンナ・チャンドラの幼少期の経験に基づくインド独立運動時代へと設定が変更された。キャスティングにはいくつかのドラマがあった。ナレーン役には当初アーミル・カーンが検討されたが辞退し、次にオファーされたアニル・カプールも一度は躊躇したが最終的に承諾した。彼は役作りのために減量し、外見も変化させた。ヒロインのラッジョー役は、当初は人気女優マドゥリ・ディークシットを想定して楽曲まで作詞されていたが、彼女のスケジュールの都合で実現せず、オーディションを受けたマニーシャ・コイララが抜擢された。コイララは最初のテストで監督に厳しい評価を受けるも、再テストを懇願し役を勝ち取ったという逸話がある。ラグヴィール役も、一度起用が決まったナーナー・パテーカルが希望する役が異なったために降板し、アヌパム・カーが代役に立てられた。ジャッキー・シュロフはシュバンカル役を演じただけでなく、製作資金面でもチョープラー監督を支えたことが知られている。撮影は主にヒマーチャル・プラデーシュ州の美しい自然景観の中で行われたが、効率とコストを考慮し、美術監督ニティン・チャンドラカント・デサイが約800万ルピーを投じてフィルムシティ内に大規模な屋外セットを建設し、主要なシーンの撮影に使用した。デサイは監督から厚い信頼を得て、この壮大なセットを作り上げた。

音楽

本作の音楽は、作曲をR・D・ブルマン、作詞をジャーヴェード・アクタルが手掛けた。ブルマンにとっては、これがキャリア最後の作品となった。彼の生み出したメロディーは、物語の情感を深く彩り、公開から時を経た現在でもインドの多くの人々に愛され続けている。映画の劇伴スコアは、マノハリ・シンとバブロー・チャクラボルティーが担当した。

公開・評価

1994年4月15日に劇場公開され、批評家からはキャストの演技、映像美、そして何よりもR・D・ブルマンの音楽が絶賛された。激動の時代を背景にした壮大なロマンスとして、観客からも高い評価を受け、商業的にも成功を収めた。

主なキャスト

ナレンドラ・シン（ナレーン）：アニル・カプール
ラジェーシュワーリー・パタク（ラッジョー）：マニーシャ・コイララ
シュバンカル：ジャッキー・シュロフ
ラグヴィール・パタク：アヌパム・カー
ビシュト少佐：ダニー・デンゾンパ
アビド・アリ・バイグ：プラン
ダグラス将軍：ブライアン・グローヴァー
ハリ・シン：マノハル・シン
チャンダ・ビシュト：チャンドニ
アシュトーシュ：アシーシュ・ヴィディヤルティ
ムンナー：ラグビール・ヤーダヴ
ガヤトリ・シン：スシュマ・セート

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