1944 (曲)

1944 (ジャマラの楽曲)

「1944」は、ウクライナの歌手ジャマラによって作詞、作曲、そして歌われた楽曲です。2016年のユーロビジョン・ソング・コンテストでウクライナ代表として出場し、決勝で合計534点を獲得し、見事優勝を果たしました。

背景と歌詞

この楽曲の歌詞は、1940年代にヨシフ・スターリンの命令によって行われたクリミア・タタール人の強制追放を題材としています。当時、ナチ・ドイツとの協力が疑われたことが理由とされています。ジャマラ自身の家族もこの悲劇に見舞われました。彼女の曽祖父は第二次世界大戦で赤軍兵士として戦っていた一方で、曽祖母は5人の子供たちを連れて中央アジアへ追放され、その過酷な道のりで娘の一人を失いました。

2016年当時、クリミア・タタール人の多くはロシアによるクリミア併合を受け入れることを拒否していました。そのため、「1944」は、クリミア半島がロシアに併合された後のロシア政府によるクリミア・タタール人への弾圧という状況下でリリースされたこともあり、大きな意味を持ちました。

歌詞は英語とクリミア・タタール語で構成されています。英語詞はアルメニア系の詩人アルト・アントニャンが手掛け、クリミア・タタール語のコーラスは、ジャマラが曽祖母から聞いたクリミア・タタール民謡「エイ、ギュゼル・クルム」（美しいクリミア）の一節を引用しています。楽曲には、アラム・コスタニャンが演奏するドゥドゥクという楽器や、ムガムというボーカルスタイルが用いられています。

ユーロビジョン・ソング・コンテストへの道のり

ウクライナは、財政的な問題から2015年のユーロビジョン・ソング・コンテストへの参加を見送りましたが、2016年に再び参加することを決定し、代表選考プロセスを開始しました。ジャマラは18人の参加者の一人として選考に参加し、2016年2月6日に行われた一次選考を見事通過し、決勝に進出しました。2月21日の決勝では、審査員投票で2位、視聴者投票で1位（382,000票以上、全体の37.77%）となり、ザ・ハードキスの「Helpless」と同点となりましたが、視聴者投票の結果が優先され、ジャマラがウクライナ代表として選出されました。

ユーロビジョン・ソング・コンテスト2016では、2つ目の準決勝の後半に出場し、「1944」はユーロビジョン史上初めてクリミア・タタール語の歌詞を含む楽曲となりました。決勝では、審査員投票と視聴者投票の両方で2位を獲得しましたが、合計得点で1位となり、見事優勝を果たしました。

政治的な論争

2016年2月、ガーディアン紙のインタビューで、ジャマラは2014年のロシアによるクリミア併合以降、「クリミア・タタール人は占領された土地に住んでいる」と述べ、この曲が現在もクリミア半島に住む自身の家族を思い出させると語りました。ユーロビジョン・ソング・コンテストのルールでは、歌詞に政治的なメッセージが含まれていると判断された場合、失格となる可能性があります。

ウクライナ代表に選ばれた直後から、一部のロシアの政治家やクリミア共和国政府は、ウクライナ政府が「タタール人の悲劇を利用して、ヨーロッパの視聴者にロシアがクリミアでタタール人を迫害しているという誤った印象を与えようとしている」と非難しました。

しかし、2016年3月9日、欧州放送連合は、この曲のタイトルや歌詞に政治的な発言は含まれていないため、ユーロビジョン・ソング・コンテストのルールに違反しておらず、大会への参加を認めると発表しました。

ユーロビジョン・ソング・コンテストでの勝利

「1944」は、ユーロビジョン・ソング・コンテスト2016で合計534点を獲得し、優勝しました。これは、2009年にアリャクサンドル・ルィバークが「Fairytale」で獲得した387点（当時の採点システムは2016年大会とは異なります）を上回る記録となりました。

外部リンク

Youtube - Official Music Video
Jamala 『1944』 - eurovision.tv

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