1945年の日本の女性史

1945年という年は、太平洋戦争が終結し、日本の社会全体が未曽有の激動を経験した時期にあたります。この大きな変化の中で、女性たちは様々な困難に直面しつつも、新たな社会への一歩を踏み出しました。

終戦直後、日本には50万人を超える戦争未亡人が残されました。また、戦時中の勤労動員によって産業を支えていた多くの女性が、職を失うという厳しい現実に直面しました。女子挺身隊員や女子肉体労働者など、総計300万人を超える女性たちが、復員する男性に職場を譲る形で相次いで解雇されたのです。工場や学校では学徒動員が解除され、女子生徒は家庭に戻るよう指示されました。

占領軍の進駐が迫る中、全国各地では婦女子の安全が懸念されました。「血の純血を保つため婦女子を逃がせ」といった通報が出されたり、「独り歩きを控えるように」との注意喚起が行われたりしました。一部地域では、女子従業員の大量解雇も重なり、交通機関が混乱するほどの疎開騒動が発生しました。一方で、占領軍向けに特殊慰安施設協会（RAA）が設置され、女性が募集されるといった対応も行われました。

この混乱の中で、悲劇も起こりました。ソ連軍の攻撃を受けた樺太では、看護婦や電話交換手が集団自決を選ぶという痛ましい出来事がありました。

しかし、厳しい状況下でも女性たちの自発的な動きが見られました。大阪では主婦たちが食糧不足に抗議するデモを行い、これが戦後消費者運動の始まりとなりました。炭鉱や病院では、労働条件の改善や不正を訴える女性労働者によるストライキが発生し、戦後初の医療争議や初の女子労働組合結成につながりました。米の輸入を求めてマッカーサー元帥への直訴が行われた例もあります。

占領軍総司令部（GHQ）は日本の民主化を推進し、婦人解放をその柱の一つとしました。これにより、女性たちの権利獲得への道が開かれました。特に重要な出来事として、12月17日の衆議院選挙法改正による婦人参政権の実現が挙げられます。これは日本の民主化において画期的な一歩であり、女性たちが政治参加への扉を開く瞬間となりました。また、米軍占領下の沖縄では、本土に先駆けて婦人参政権が認められていたことも注目されます。

政治的な権利が与えられると共に、女性たちは社会活動を活発化させました。市川房枝らによって結成された「新日本婦人同盟」は、婦人参政権獲得などを目標に掲げ、啓発活動を行いました。厚生省も婦人団体の結成を促し、各地で様々な目的を持った女性たちの組織が生まれました。学校でも学園民主化の動きが広がり、生徒によるストライキが発生しました。大学では自治会が結成され、大学行政への参加を求める声が上がりました。農村部でも食糧増産や闇取引規制を目指す活動が行われ、都市部では生活改善を目指す団体も設立されました。

一方で、女性を取り巻く生活環境は引き続き厳しいままでした。多くの女性が職を失った結果、非農業部門の女性有業者は激減しました。闇市では物価が高騰し、食糧不足は深刻でした。戦災や出征による父の不在といった困難を抱える家庭では、極貧の中で母子が苦しみ、心中未遂といった悲劇も発生しました。栄養失調による乳児の捨て子も大都市で増加するなど、社会問題が顕在化しました。

1945年は、女性たちが戦争の終結と社会構造の激変という未曽有の事態に直面した年でした。雇用や生活の困難という厳しい現実がありながらも、女性たちは政治的な権利を獲得し、自ら声を上げ、組織を作り、来るべき新たな時代へ向けた力強い一歩を踏み出したのです。戦時中の国家統制組織であった大日本婦人会が解散し、女性たちは自らの手で未来を切り拓く道を歩み始めました。

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