1945年の日本競馬

1945年の日本競馬

1945年（昭和20年）は、第二次世界大戦の終結という歴史的な節目を迎え、日本競馬界も戦時体制から戦後の混乱、そして復興への道を模索する激動の一年でした。馬齢は旧表記で統一して記述します。

戦時下の競馬界

年明け、日本競馬会は記録賞、能力賞、種牡馬賞といった新たな顕彰制度の導入を進めます。戦況の厳しさが増す中、2月には政府命令により輓馬機動隊の設立が決定されました。これは戦時下の馬匹資源を国家のために活用するための組織であり、日本競馬会は急遽、業務規則の改正や本部・事務所の設置を進めます。運営費用への政府補助金も交付されました。空襲の激化に伴い、職員への警防手当支給も開始されます。馬の能力を維持するため実施されていた能力検定競走は、3月に施行場所が変更され、京都競馬場の一部施設は機動隊の運営に転用されました。4月から5月にかけては、東北や北海道にも日本競馬会の支所が開設され、馬の管理体制が強化されます。6月には馬移動統制規則が施行され、家畜市場の出場馬の全頭購入が日本競馬会に義務付けられるなど、馬資源の統制が強まりました。夏には北海道と東北で第1次能力検定競走が実施されましたが、戦時下の厳しい状況が反映されていました。戦争は競馬場施設にも影響を及ぼし、陸軍に貸与されていた中山競馬場の一部が不審火で焼失する事態も発生しています。

終戦、混乱と再編

1945年8月15日、終戦。 この出来事は、日本競馬界の状況を一変させました。終戦直後、日本競馬会は軍に接収されていた各競馬場の返還交渉を開始します。同時に、深刻な食糧不足に対応するため、競馬場を農地として活用する計画を立案・実行に移しました。東京競馬場、用賀修練場、中山競馬場、福島競馬場といった施設が一時的に農場と定められ、阪神競馬場でも甘藷栽培が行われました。行政面では、農商省が農林省に改称され、馬事行政を担っていた馬政局が廃止されるなど、体制が変化しました。戦時中の輓馬機動隊は、8月末に「輓曳事業本部」と名称を変更します。延期されていた第2次能力検定競走は、9月末から10月にかけて実施されましたが、この時期に札幌競馬場事務所が開設され、北海道支所は廃止となりました。11月には、戦後の日本競馬のあり方を示す「競馬施行方針」が日本競馬会で取りまとめられ、政府へ上申されました。これは競馬再開に向けた重要なステップでした。一方、戦争終結による「軍馬資源保護法」などの撤廃は、地方競馬から法的根拠を奪い、非合法な「闇競馬」が横行する時代を招くことになります。年末には、新潟競馬場がワクチン製造のため一時的に民間に貸与されるなど、競馬場施設が緊急性の高い目的のために転用される例も見られました。

この年に生まれた主な馬と人物

1945年には、戦後復興期の日本競馬を支えることになる才能が数多く誕生しました。競走馬では、後のクラシックで活躍するハマカゼやミハルオーなどが生まれました。また、調教師の白井寿昭氏や橋口弘次郎氏、騎手の大崎昭一氏や嶋田功氏など、後年、日本の競馬界に大きな足跡を残す多くの関係者がこの年に生を受けています。

結び

1945年は、戦争の終結という激変の中で、日本競馬が直面した困難と、そこから立ち上がろうとする模索が共存した一年でした。この経験を経て、日本の競馬は新たな時代へと歩みを進めることになります。

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