1945年度の将棋界

1945年度将棋界：戦火の影と新たな一歩

1945年度（昭和20年度）の将棋界は、太平洋戦争の終結という歴史的転換期と重なり、未曽有の困難に見舞われました。戦争は将棋界にも大きな影を落とし、対局の中止、棋士の戦死、そして将棋団体組織への甚大な被害など、多くの悲劇的な出来事が発生しました。しかし同時に、この激動の時代は、戦後の将棋界のあり方を模索し、新たな制度を生み出す契機ともなったのです。

戦争による混乱と犠牲

1945年上旬、太平洋戦争の激化により、将棋の対局は事実上不可能となりました。その影響は甚大で、第5期名人戦は中止を余儀なくされ、木村義雄名人は名人位をそのまま保持することとなりました（留位）。さらに同年5月には、沖縄戦にて野口忠雄四段が戦死するという痛ましい出来事が発生しました。享年30歳（数え年）という若さで、将棋界の未来を担うべき才能が失われたことは、大きな損失でした。

戦争は将棋団体組織にも襲いかかります。5月25日には、将棋大成会本部が空襲の被害を受けました。そして10月には、本部が完全に焼失。その後、金易二郎八段宅を仮本部、渡辺東一八段宅を仮事務所として、活動を再開せざるを得ない状況に陥りました。

新たな制度への移行：順位制の導入

困難な状況の中、将棋界は未来を見据えた改革に着手します。11月29日、将棋大成会は臨時総会を開催。その議題の中心は、それまでの段位制度の撤廃でした。激しい議論が交わされた末、最終的に決定されたのは「順位制」の導入です。これは、棋士の順位を順位戦によって決定するという画期的な制度であり、戦後の将棋界の運営において重要な役割を果たすことになります。この順位制の導入は、混乱の時代における将棋界の再生に向けた重要な一歩でした。

名人の死去と時代の転換

1946年3月12日、関根金次郎十三世名人が77歳で死去しました。長きに渡り将棋界を牽引してきた名人の逝去は、一つの時代の終焉を象徴する出来事でした。

戦後の将棋界への布石

1945年度の将棋界は、戦争という未曽有の困難の中、対局の中止、棋士の戦死、組織の壊滅という大きな犠牲を払いました。しかし、その一方で、順位制という新たな制度の導入など、戦後の将棋界の礎を築くための重要な動きも始まりました。この年は、激動の時代の中で、将棋界が未来に向けて歩み始めた転換期だったと言えるでしょう。

参考文献

山本武雄『将棋百年』時事通信社、1966年
加藤治郎、原田泰夫、田辺忠幸『［証言］将棋昭和史』毎日コミュニケーションズ、1999年9月。ISBN 4-8399-0255-0

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