1949年の航空

1949年の航空界

1949年は、航空技術の進歩、長距離飛行の記録更新、そして組織再編や悲劇的な事故が交錯する、航空史において特筆すべき一年となりました。

新型機の登場と技術の革新

この年、いくつかの注目すべき航空機が初めて空へ飛び立ちました。2月15日には、フランスが開発したユニークな二階建て輸送機、ブレゲー 761の試作機が初飛行に成功。また、4月21日には、ラムジェットエンジンのみで推進する世界初の航空機、ルデュック010が試験飛行を行いました。これはジェット推進技術の可能性を広げる重要な一歩でした。10月28日には、アメリカのマーチン社による試作ジェット爆撃機、XB-51も初飛行を迎え、高速爆撃機の新たな形を提示しました。

安全技術の面では、緊急脱出装置である射出座席の実用化が進みました。5月30日、イギリスの全翼機アームストロング・ホイットワース AW. 52の試験飛行中に操縦不能に陥った際、テストパイロットのジョー・ランカスター氏は射出座席を用いて無事脱出。これは射出座席による初の成功例とされています。さらに、8月9日にはアメリカ海軍のF2H-1 バンシーからの緊急脱出にJ. L. Fruin氏が成功し、飛行中の米軍パイロットとして初の射出座席使用例となりました。

記録樹立と組織の動き

長距離飛行における偉業も達成されました。2月26日から3月2日にかけ、アメリカ空軍のボーイング B-50 スーパー・フォートレス「ラッキー・レディ II」は、空中給油を受けながら無着陸での世界一周飛行を完遂しました。これは総距離37,742kmを94時間1分で飛行するという、当時の画期的な記録でした。人員輸送の分野では、5月19日にアメリカの飛行艇マーチン JRMが308人を一度に輸送し、単一機による最多人員輸送記録を樹立しました。また、11月18日にはダグラス C-74 ロードマスターが103名の乗客を乗せて大西洋を横断し、一回の飛行で大西洋を横断した最多乗客記録を達成しました。ヘリコプター分野でも進歩が見られ、5月21日にアメリカのシコルスキー S-52が6,468mのヘリコプター高高度飛行記録を樹立しています。

国際情勢とも関連する重要な出来事として、4月4日に北大西洋条約機構（NATO）が設立されました。航空組織の動きとしては、カナダ空軍のアクロバット飛行チーム、ブルー・デビルスが5月4日に結成されましたが、7月25日には訓練中の事故でパイロットの一人、ボブ・キップ氏が犠牲となる悲劇も起こりました。また、南米では5月14日、アルゼンチンの主要航空会社4社が統合され、国営のアルゼンチン航空が誕生しました。冷戦下で続けられていたベルリン空輸は、9月30日に公式に終了。連合国軍は西ベルリン市民のために食料や燃料など膨大な物資を空輸し続けました。

アメリカ国内の重要な変化としては、12月8日にカリフォルニア州のミューロック陸軍飛行場が、テストパイロットの功績を称え、エドワーズ空軍飛行場と改名されています。

悲劇的な航空事故

この年は、複数の痛ましい航空事故も発生しました。
5月4日には、イタリアのトリノ近郊でアリタリア航空のフィアットG.212が丘陵地に墜落。この事故により、イタリアのサッカークラブ、ACトリノの選手18名を含む乗員・乗客31名全員が犠牲となりました（スペルガの悲劇）。
9月9日には、カナダのケベック州上空で、カナディアン・パシフィック航空のDC-3に積み込まれた爆弾が爆発し、乗員・乗客23名全員が死亡する事件が発生しました（カナディアン航空機爆破事件）。
10月27日、エールフランスのロッキード コンステレーションがアゾレス諸島に墜落し、フランスの著名なボクサーであるマルセル・セルダン氏やヴァイオリニストのジネット・ヌヴー氏を含む48名が犠牲となりました。
11月29日には、アメリカン航空のDC-6がダラス・ラブフィールド空港でエンジン故障により滑走路を逸脱し、建物に衝突。乗客26名と乗員2名が死亡しました。

1949年は、航空技術が新たな記録に挑戦しつつ、その安全性と信頼性が問われた年であり、冷戦下の国際情勢とも深く結びついていました。これらの出来事は、その後の航空の発展に大きな影響を与えました。

もう一度検索