1950年の航空

1950年は、世界の航空史において、特に軍事分野で大きな動きがあった一年でした。その最大の要因は、同年6月25日に勃発した朝鮮戦争です。この戦争は、航空機が重要な役割を果たすことになり、航空戦の戦訓や技術的な進歩を促すことになります。

年の初めには、いくつかの航空事故が発生しました。1月26日には、アメリカ空軍のダグラスC-54スカイマスター輸送機が44名を乗せたまま消息を絶つという重大な事案が発生しました。また、2月13日には、アメリカ空軍の戦略爆撃機B-36がカナダのブリティッシュコロンビア州で墜落し、搭載していた核物質の一部が事前に投棄されるという出来事もありました。

軍事的な動きとしては、朝鮮戦争勃発以前にも見られました。3月20日には、イギリス空軍のアブロ リンカーン爆撃機が、マレーの共産ゲリラ対策のためにシンガポールへ派遣されています。

朝鮮戦争が始まると、アメリカ空軍は迅速に対応し、6月25日には韓国市民への救援活動を開始しました。そして、6月27日には早くも初の空中戦が発生し、アメリカ空軍のF-82ツイン・ムスタングが北朝鮮空軍のYak-9を撃墜して、同戦争における最初の空対空撃墜記録を樹立しました。同日、アメリカ空軍のB-29スーパーフォートレスによるソウルの鉄道駅と橋への爆撃が行われ、これは朝鮮戦争における初の戦略爆撃と記録されています。翌日、6月28日にはアメリカ空軍のB-26インベーダーが北朝鮮への攻撃を開始し、オーストラリア空軍も6月30日にはP-51ムスタング部隊を派遣するなど、各国が次々と参戦しました。

7月3日には、アメリカ海軍の航空母艦ヴァリー・フォージから発艦したF9Fパンサーが北朝鮮のYak-9を撃墜。これはジェット戦闘機が朝鮮戦争に初めて参加し、戦果を挙げた事例となりました。同日には、イギリス海軍の航空母艦トライアンフから発艦したスーパーマリン シーファイヤーやフェアリー ファイヤフライも北朝鮮攻撃に加わっています。8月27日には、南アフリカ空軍のP-51ムスタング部隊も朝鮮戦争へ送られました。

秋になると、航空戦はさらに激化します。10月には、ソビエトと中国のパイロットが操縦するMiG-15が北朝鮮空軍を支援するために戦場に投入され、高性能ジェット機同士の対決が現実のものとなりました。11月8日、アメリカのラッセル・ブラウン操縦のF-80シューティングスターがMiG-15を撃墜し、これがジェット機対ジェット機による初の撃墜記録となりました。そして、12月17日には、MiG-15に対抗すべく、アメリカ空軍のF-86セイバーが朝鮮戦争に投入されました。

軍事面での大きな動きに加え、民間航空や技術開発の面でも重要な出来事がありました。6月1日には、イギリスのBEAがリバプールとカーディフ間のヘリコプターによる旅客輸送を開始し、新しい交通手段の可能性を示しました。また、7月29日には同じくBEAが、ヴィッカース バイカウントを用いてロンドンとパリ間の旅客運送を開始。これはターボプロップ機として初の商業運航でした。一方で、11月7日にはBOACが最後の旅客用飛行艇の運航を終了し、陸上機が主流となる時代の流れを象徴する出来事となりました。イタリア空軍初のディスプレイチーム「キャバリノ・ランパンテ」が編成されたり（日付不詳）、イスラエルの航空会社アルキア・イスラエル航空が運航を開始したり（日付不詳）と、各国の航空組織にも動きが見られました。

技術面では、6月16日にアルゼンチンが開発したジェット戦闘機、FMA I.Ae. 33 プルキー IIが初めて空を飛びました。また、記録への挑戦も行われ、9月22日にはデーヴィッド・シリングがF-84サンダージェットを駆り、ジェット機による初の大西洋無着陸横断を達成しました。9月29日にはリチャード・V・ホイラーがパラシュート降下高度の世界記録13,000メートルを樹立しています。

年の終わりに、航空分野で顕著な功績を挙げた人物が表彰されました。ハーモン・トロフィーはデイヴィッド・C・シリングに、FAI・ゴールド・エア・メダルはフランク・ホイットルに贈られています。

このように1950年は、朝鮮戦争による軍事航空の進化と実戦投入、民間航空における技術革新の実用化、そして記録への挑戦など、多岐にわたる出来事が航空史に刻まれた年でした。

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