1951年の日本競馬

1951年（昭和26年）は、戦後復興期にある日本の競馬界にとって、制度改革、組織整備、そして数々のドラマが繰り広げられた変革の年です。この時期の公式記録では、馬齢はすべて旧表記で記載されています。法改正や新たな試みが進められる一方で、競馬場を取り巻く環境の変化や、伝説となるスターホースの誕生と早すぎる別れなど、日本の競馬史において特筆すべき出来事が多く発生しました。

制度と運営面の変革

この年、競馬に関する制度や運営面でいくつかの重要な動きがありました。まず、国営競馬において、レースの結果をまとめて予想する「重勝式投票券」が導入されました。具体的には、最初の3レースを対象とした「三重勝式」が3月31日から発売されましたが、予想の難しさなどから広く浸透せず、後の1961年には発売が中止されています。

法改正も行われました。4月9日の競馬法改正により、開催困難な競馬場の予定回数を他の競馬場で代替開催することが可能になり、国営競馬の収益安定化が図られました。4月28日には、これまで個人に限られていた馬主登録が法人にも認められるようになり、競馬界への参加形態が多様化しました。また、地方競馬についても、5月22日の法改正で所在地市町村が年間2回まで開催できる規制緩和が行われました。

競馬界の組織化も進展しました。馬主の全国組織である全日本馬主協会連合会の結成に向けた動きが始まり、7月には第1回理事会が開催されました。年末には、日本調教師騎手会の設立が認可されるなど、競馬を支える専門家の団体が整備されました。公営競馬全体を連携させる目的で、全国公営競馬主催者協議会も設立されています。

運営に関する細則として、繋駕速歩競走において一時的に調教師が騎手を兼ねることが認められたり、3歳馬の速歩競走への出走時期が変更されたりといった動きもありました。

競馬場を取り巻く環境も変化しました。青森県では青森競馬場が廃止されたほか、朝鮮戦争の影響で函館競馬場が警察予備隊に接収され、通年開催ができなくなったため、代わりに札幌競馬場で開催が増やされるなどの対応が取られました。一方で、年末には進駐軍に接収されていた兵庫県の逆瀬川の競馬用地が解除されるという良い知らせもありました。

主要競走の結果

この年には、現在の主要競走の前身となるレースが新たに創設されました。4月22日には「第1回東京杯」が、7月1日には「第1回安田賞」がそれぞれ東京競馬場で始まりました。

年間を通じて行われた主な重賞競走の結果は以下の通りです（馬齢は旧表記）。

第11回桜花賞（阪神）：ツキカワ
第23回天皇賞（春）（京都）：タカクラヤマ
第11回皐月賞（中山）：トキノミノル
第18回東京優駿競走（日本ダービー）（東京）：トキノミノル
第1回東京杯（東京）：トサミドリ
第1回安田賞（東京）：イッセイ
第24回天皇賞（秋）（東京）：ハタカゼ
第12回優駿牝馬（オークス）（東京）：キヨフジ
第12回菊花賞（京都）：トラツクオー

障害競走の最高峰である中山大障害は、春・秋ともに開催されました。

第27回中山大障害（春）（中山）：ツキヤス
* 第28回中山大障害（秋）（中山）：ミツタヱ

競馬界を巡る特別な出来事

この年の競馬界で最も人々の心に衝撃と悲しみをもたらした出来事は、無敗で二冠（皐月賞、日本ダービー）を制し、三冠達成への期待が最高潮に達していたトキノミノルの急死でした。ダービー優勝からわずか17日後の6月20日、彼は病のため急逝しました。「幻の名馬」として、その早すぎる死は多くの競馬ファンに惜しまれました。

その他、東京競馬場に世界的に著名な俳優である早川雪洲らが来場し、記念レースが開催されるなど、競馬が社会的な関心を集めつつある様子も見られました。

未来への繋がりと別れ

1951年には、後の日本の競馬を彩る名馬たちや、競馬界を支える多くの人々が誕生しました。この年に生まれた競走馬たちは1954年のクラシック世代を形成し、ヤマイチ、タカオー、ダイナナホウシユウなどが主要な活躍馬として記録されています。また、中央・地方・ばんえい競馬において、後に騎手や調教師として長きにわたり活躍する多くの関係者が、この1951年に生を受けています。

一方で、この年には惜しまれつつターフを去った名馬たちもいました。前述のトキノミノルに加え、戦前のダービー馬カブトヤマなどもこの年に亡くなっています。

まとめ

1951年は、戦後日本の競馬が制度・組織の両面で近代化を進めた転換期でした。法改正や新しい投票方式・レースの導入、関係団体の設立など、その後の発展に繋がる基盤が築かれました。同時に、トキノミルのようなスターホースの誕生と悲劇的な別れは、競馬の持つドラマ性を強く印象付けました。外部環境の影響を受けながらも、新しい時代の競馬に向けて着実に歩みを進めた、日本の競馬史において記憶されるべき一年です。

もう一度検索