1953年ドイツグランプリ

1953年8月2日、ドイツ・ニュルブルクリンクにおいて、F1世界選手権第7戦、1953年ドイツグランプリが開催されました。1952年と1953年は、通常適用されるフォーミュラ1レギュレーションではなく、フォーミュラ2レギュレーションが適用された特異なシーズンでした。

このレースは、フェラーリのジュゼッペ・ファリーナが圧倒的な強さで制しました。2位との差は1分以上と大きく、ファリーナにとってF1における最後の優勝となりました。46歳での優勝は、ベテランドライバーの意地を見せつけたと言えるでしょう。一方、ランキング首位を独走していたアルベルト・アスカリは、予選で唯一10分を切る速さでポールポジションを獲得。決勝でも序盤は独走態勢を築いていましたが、5周目に右フロントタイヤが外れるアクシデントに見舞われ、優勝争いから脱落しました。

その後、アスカリはチームメイトであるルイジ・ヴィッロレージとマシンを交換し、逆転優勝を目指して奮闘します。12周目には予選を上回る速さでファステストラップを記録するなど、諦めない走りを見せつけました。しかし、15周目を終えたところでエンジンブローによりリタイア。アスカリはファステストラップによる1ポイントを追加したのみでレースを終えました。当時、有効ポイントはベスト5戦と考えられていましたが、実際にはベスト4戦であったため、この時点でアスカリの2年連続2度目のチャンピオン獲得が決定しました。

このレースには、当時19歳の皇太子明仁親王（後の明仁上皇）が観戦に訪れたことが大きな話題となりました。6ヶ月間にわたる欧米歴訪の一環として西ドイツに滞在していた明仁親王は、ニュルブルクリンクで「大きな自動車レース」が開催されていることを知り、急遽観戦に訪れたと伝えられています。レース終了後には、優勝したファリーナと握手を交わすなど、親密な交流が報道を通して世界中に発信されました。明仁親王が自動車レースを観戦したのは、この1回のみであるとされています。

決勝レースには34台のマシンが出走し、これはF1の歴史において決勝出走台数最多記録として現在も記録に残っています。このレースのエントリーリストには、多くの著名なドライバーの名前が並んでいます。しかし、前週に開催されたスポーツカーレースで重傷を負ったアルフォンソ・ゴンザレスなど、出場できなかったドライバーもいました。また、エントリーはしたものの実際には出場しなかったドライバーも存在しました。アスカリとヴィッロレージがマシンを共有した点も、このレースの特徴と言えるでしょう。アスカリは9周、ヴィッロレージは8周走行しました。また、別のマシンでも、ヴィッロレージが10周、アスカリが5周走行しています。

この1953年ドイツグランプリは、ドラマチックな展開、歴史的な記録、そして皇室関係者の来場と、多くの点で記憶に残るレースとなりました。このレースの結果により、アスカリのチャンピオンシップが確定しただけでなく、F1の歴史に新たな一ページが刻まれたのです。レース後のドライバーズチャンピオンシップでは、アスカリが圧倒的なポイント差で首位に立っていました。 この結果、アスカリのチャンピオン獲得が決定したのです。 多くの要因が絡み合った、まさに忘れがたい一戦であったと言えるでしょう。

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